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写真・文/森達也

第11回 2月の畑

 タヌキだけではない。虫や小動物も、探せば実のところはたくさんいる。冬に見かける虫の代表格は、何といってもフユシャク(冬季に活動するシャクガ科の仲間の総称)だ。見た目はとにかく地味。最もよく目にする蛾のタイプだ。幼虫はよく知られている尺取虫。フユシャクのほとんどは、気温がぐっと冷え込み始める11月から12月にかけて成虫となる。
 フユシャクがなぜわざわざ冬に成虫になるかについては諸説ある。カマキリやクモなどの天敵が少ないからとの理由が、いちばん説得力はある。でも鳥は冬季にもいる。冬場は彼らも餌が欠乏するから飢えている。シャクガは貴重な蛋白源になるはずだ。だから違う理由があるのかもしれない。

 フユシャクガで特筆すべき生態は、メスははねがないか、あるいはあっても極端に短くて、飛翔する器官としてはまったく意味を失っていることだ。翅を喪いながらのそのそと地表を歩くその姿は、まるでメタボで太りすぎたシラミかダニのようだ。

 なぜフユシャクのメスが翅を喪ったのかといえば、天敵が少ないから逃げる必要があまりないことと、フユシャクの成虫は餌をいっさい摂らないので、出産のためにエネルギーを浪費しないためとされている。

 成虫になってからは餌を摂らない虫はけっこういる。ガの仲間では他にカイコがそうだ。ドクガ科やシャチホコガ科も成虫になってからは口吻こうふんが退化する。ガではないけれどホタルやウスバカゲロウもそうだ。

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