啓蟄は過ぎたけれど、気温はまだ低い。よく晴れた3月初旬のある1日、首都圏のいくつかのポイントを歩き回ってみたけれど、虫や動物たちの影はまだ薄い。
人を別にすれば、少なくとも首都圏において、ほとんどの野生の生きものの生命活動は冬に低下する。虫は卵で越冬する種が多いし、カエルやトカゲなどの爬虫類や両生類は例外なく冬眠する。クマやタヌキやヤマネやリスなど野生の哺乳類も、冬眠かそれに近い状態でまどろみながら春の到来を待つ。
ところが鳥の仲間のほとんどは、基本的に冬も活発に動き回る。
考えたら不思議だ。鳥の先祖は、ティラノサウルスなど二足歩行の恐竜(獣脚類)から分岐進化したと言われている。つまり爬虫類とはかなり近い縁戚関係だ。ところが鳥は冬眠しない。冬のあいだも活動し続ける。地中の穴でひっそりと冬を越す鳥がいてもよさそうなものだけど、そんな種はひとつもない。変温動物にとても近いのに、低温に対しては徹底した恒温動物だ。
推測だけど、鳥は空を飛ぶためにとても無理をしている。徹底して身体を軽くするために、一刻も休まずに餌を食べて排出することをくりかえしている。だから栄養を体内に貯蔵しなくてはならない冬眠が不得手なのかもしれない。
とにかく鳥は冬も元気だ。特に水鳥。凍てつくような寒い日も、凍えたり縮こまったりするような気配はまったくない。指を入れれば切れそうに冷たい沼や池の水にぷかぷかと浮かびながら、彼らはいつも、とても優雅に、とても精力的に、とても喧しく鳴き交わしながら、嬉々として泳ぎ回っている。
日本で見られる水鳥の多くは、夏のあいだはシベリアで雛を育て、冬になると日本に渡ってくる。これを冬鳥という。冬鳥がいるからには夏鳥もいる。つまり夏の時期に日本に来て、冬が近づけば暖かい地域に移動する鳥。代表的なのはツバメやホトトギス。
数としては夏鳥よりも冬鳥のほうが多いようだ。マヒワやツグミやルリビタキなど。水鳥の多くも冬鳥だ。渡りをしない通年の水鳥は、カルガモやオシドリなど少数派だ。冬に見られる水鳥は、白鳥を筆頭に、マガモ、コガモ、オナガガモ、スズガモなど数多い。
ここで水鳥の定義について簡単にまとめておく。基本的には水辺に暮らす鳥。湿原と水鳥の環境をめぐる国際的な条約であるラムサール条約によれば、代表的な水鳥は、アビ目、カイツブリ目、ペリカン目(ペリカン、ウ)、コウノトリ目(サギ、コウノトリ、トキ、フラミンゴ)、ガンカモ目(ガン、カモ、ハクチョウ)、ツル目、クイナ目(オオバン、クイナ)、チドリ目(シギ、チドリ、カモメ、アジサシ)など。