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第12回 アヒルとガチョウ

 アヒルもガチョウも家禽の歴史は古い。特にガチョウについては、古代エジプト文明の時代から家禽化されていたとの記録がある。だからヨーロッパにおいてガチョウは、昔からとても身近な生きものだった。羊の番をするのは少年だし、牛の乳(しぼ)りは若い娘、そしてガチョウの番をするのは年配のおばさんという役回りがあったようだ。
 このおばさんが、餌をついばむガチョウを横目で眺めながら、集まってきた近所の子供たちに昔話を語る。つまり「ガチョウおばさんの物語」(Conte de Ma Merè l'Oye)。これは17世紀にフランスで出版されたシャルル・ペローの童話集の副題だ。英語版ではまさしくマザーグースのお話(Mother Goose's Tales)となっている。そういえば金の卵を産んだのもアヒルではなくガチョウだった。

 ガチョウはガンが家禽化されたもの。ならばアヒルは?
 ここで即答できた人はすばらしい。僕は即座にはわからなかった。でも聞けばなるほどとは思う。アヒルはカモだ。その家禽化の歴史はやはり(ガチョウほどではないようだけど)古い。豊臣秀吉の時代にアヒルを水田に放して飼育することを奨めたとの資料が残されているようだ。お伽噺(とぎばなし)においてはどうか。アンデルセンのマッチ売りの少女が見た豪華で暖かい食事の幻影の中心には、湯気を立てるガチョウのローストがあった。
 日本の普通の家庭で食卓にアヒルやガチョウの料理がのぼることは少ないけれど、でもアヒルの卵はピータンだし、それぞれの羽毛は羽根布団やダウンジャケットの中身としてよく利用されている。だから実のところは、実生活においても決して縁遠い動物ではない。フォアグラはガチョウに過剰な餌を与えることで人工的に作り出した脂肪肝だけど、アヒルでも同様のものはできるし、フランスでは実際にアヒルのフォアグラも流通しているようだ。欧米ではローストといえばどちらかというとガチョウだけど、中華料理の食材としてはアヒルのほうがよく使われているような気がする。

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