と書くと今回の原稿は妥協の産物のようだけど、でも首都圏に生息する動物として、ハトはいずれ取り上げなくてはと考えてはいた。ハトはハト目ハト科に属する鳥類の総称。ハト胸という言葉があるように、胸骨と胸筋が発達していることが特徴だ。日本にはアオバト、カラスバト、キジバト、ドバトなどが生息する。ソウルで見かけたこのハトもドバトだ。
ドバトはカワラバトの飼養品種が野生化したもの。純粋な野鳥ではない。つまりかつての家禽なのだ。
この連載で以前にアヒルやガチョウをとりあげた。このふたつとニワトリは代表的な家禽だ。なぜなら飼育しやすく、繁殖も容易だし、卵や肉の量が多くておいしいからだ。
ヨーロッパなどでは高級料理の素材に使われるけれど、ハトの家禽化への背景は、ニワトリやアヒルたちとはだいぶ違う。食用が目的ではない。使役だ。
ハトは渡り鳥ではない。ところが地磁気を察知する能力がとても高い。また帰巣本能も強い。だから電信電話が発達していない時代には、伝書バトとしてかなり利用された。
つい先日、知り合いの新聞社の記者から聞いた話だけど、戦後しばらくのあいだ、彼ら社会部の記者たちは、遠くの現場に行くときにハトを入れた籠を持ってゆくことが当たり前だったという。取材して記事を書いてから、その紙片をハトの脚にくくりつけた容器に入れて空に放つ。
メールはもちろんFAXなどまだない時代だ。書いた原稿はそのまま持ち帰るしか方法はない。ところが九州や北海道から東京まで戻ろうと思えば、1日から2日間はかかる時代だ。だからそれぞれの新聞社に帰るように訓練されたハトを利用することが、原稿を送るためには最も早い方法なのだ。
でもハトの中には周囲の動きに同調してしまうハトもいる。つまり「空気を読みすぎる」ハト。時おり読売のハトが朝日のハトの動きにつられたり、あるいは毎日のハトが共同通信のハトを誘導してしまったりすることも、少なからずあったようだ。そうなると抜かれる。大事な記事を落とす。だから優秀なハトを育成することは、当時の新聞社にとって死活問題だったという。