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写真・文/森達也

第15回 住宅地のヒキガエルの謎

 肩書きは「映画監督・作家」だけど、映像制作と執筆だけで食っているわけではない。他にも依頼があればいろいろやっている。その意味では受動的で潜在的なフリーターに近いと内心では思っている。
 昨年から早稲田大学で教えている。こちらの肩書きは「客員教授」。五年かかって最低の成績でやっと大学を卒業して、しかも卒業後は就職せずにまさしくフリーターになっていた自分にとって、この肩書きはあまりに分不相応すぎてとても申し訳ない。謙虚さも度を過ぎれば嫌味になることは承知しているけれど、子供のころからの性分だから仕方がない。だから大学では、いつも下を向いて歩いている。

 五月のとある日の夕方。授業を終えた僕は、正門すぐ横の銀杏の木の根元で、握りこぶし大の土塊のようなものが動く瞬間を目撃した。ヒキガエルだ。見渡せば数メートル離れた場所にももう一匹。どうやら二本の銀杏が植樹されているこの小さな一角は、彼らの棲息地らしい。



 脊椎動物門両棲網りょうせいこう無尾目カエル亜目ヒキガエル科に分類されるヒキガエルは、国内ではニホンヒキガエルとアジアヒキガエル、ナガレヒキガエルと外来種のオオヒキガエルの四種の生息が確認されている。
 ニホンヒキガエルは、さらにアズマヒキガエルという亜種に分類される。この二つは素人にはなかなか見分けがつかない(アズマヒキガエルのほうが鼓膜が微かに大きいらしい)。生息地も微妙に違う。人家の近くで時おり見かけるヒキガエルの多く(つまり別名ガマガエル)は、このアズマヒキガエルであると考えていいようだ。

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