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 都会では自然が失われている。人は自然を加工せずにはおれない生きものなのだから、ある意味でそれは当たり前だ。でもネズミやゴキブリやカラスなど一部の虫や生きものたちは、大都会に適応して、とてもたくましく生きている。
 セミは決して適応する力が強いわけではない。でもなぜかしぶとい。都会にわずかに残された公園や緑地を拠点にして、毎年のように大合唱を続けてきた。
 だからそのセミがもしも今年、大きく減少しているとしたら、これはかなり一大事だ。

 その生涯の大半を地中で過ごすセミは、温度変化にとても敏感な虫だ。かつてセミの代名詞はミンミンゼミだった。ところが僕が子供のころには、セミといえばほとんどがアブラゼミだった。そして今は、特に都市部においては、ミンミンゼミを一回り大きくしたようなクマゼミが主流となっている。
 なぜこれほどに目まぐるしく変遷してきたかといえば、アスファルトなどで地表が覆われることで地中の温度が上昇するヒートアイランド現象によって、高温に弱い種の幼虫が減少するからだと説明する仮説がある。つまりアブラゼミはミンミンゼミよりも高温に強く、そしてクマゼミはアブラゼミよりも高温に強いということになる。
 ある程度の説得性はある。ならばそのクマゼミすら現れないということは、都市部における地中の温度が、もはやセミの幼虫が生きながらえることが不可能なほどに上昇してしまったということなのだろうか。
 ……やっぱり温暖化じゃ不適切だ。灼熱化は進んでいる。

 8月も中盤を過ぎて、セミの声は少しずつ増えてきた。どうやら個体数が減少したというよりも、地表に出現する時期が、例年より1~2週間ほど遅れただけだったのかもしれない。滅私奉公の意識が強いということは、集団の規範を個の感情よりも上位に置くということでもある。だから抜け駆けはしない。遅れるときはみんなで遅れる。その意味では日本人的なメンタリティを持つ虫だ。
 ただし胸を撫で下ろすわけにはゆかない。冷夏ならまだしも、これほどの酷暑なのだから、彼らが地表に出るタイミングをずらした理由はよくわからない。
 エコロジーブームへの反証本『偽善エコロジー』(武田邦彦著)が売れているらしい(まだ読んでいないけれど)。確かに善意は暴走する。とんでもない副作用をもたらす場合がある。警戒せねばならない。でも少なくとも地球環境については、多少は過剰なくらいに気にしたほうがいいと僕は思う。だって壊れたもの、消えたものは、もう二度と戻らないのだから。

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