首都圏動物記のトップへ WEB連載 5

第2回 奥武蔵のプラナリア2

 ただし完璧ではない。切る箇所によっては、時おり微妙にいびつな形で再生してしまう個体もいるようだ。あるいは完全な分断ではなく、たとえば頭の部分に縦に切れ目を入れると、写真のような双頭のプラナリアができあがる。もっといろいろ、切り方によってはいろんな幾何学的な形状になるようだ。遊星からの物体Xだ(映画を見ていない人ゴメン)。自然状態のプラナリアは、一定の大きさに成長すると自然に分割する(雌雄同体のプラナリアは、有性生殖と分裂の双方によって繁殖する)。彼らにとって分割は、日々の営みの延長でしかないのだろう。

 プラナリアより少し原始的な動物、例えばクラゲには脳がない。でもプラナリアは、集中神経系(脳)を持った最初の動物群の末裔まつえいであるらしい。外界から入ってきた情報は脳で処理されて、発令された指令は腹側神経索から運動神経を経由して筋肉に伝えられる。その意味では、構造的には人間とほとんど変わらない。

 ここで僕は考える。ならば脳を再生した個体は、かつての脳の記憶を持っているのだろうか。もしもあるとするならば、太古の記憶を持ったプラナリアが、地球上のどこかに生息しているのかもしれない。いや今目の前にいる個体が、その記憶を持つ可能性だってある。屋久島の千年杉ならぬ億年プラナリア。やっぱり生きものは面白い。

参考文献:『切っても切ってもプラナリア』阿形清和(岩波書店)

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