でもこのころは誰も知らなかった。ミドリガメがとても大きくなるカメであることを。要するに夜店のミニウサギ。あるいはヒヨコ。買うときは小さくて可愛いが、あっというまに成長する。ミドリガメの場合はヒヨコほどに成長は早くないけれど、でもやっぱり数年後には甲羅の大きさが15~20センチほどに成長する。
こうしてミドリガメは日本中の池や沼やお堀に放された。僕も何匹かは放流した。
少し話は逸れるけれど、犬でも猫でもアザラシでも熊でも鶏でもカモでもヤマアラシでもチンパンジーでも駝鳥でも、要するに子育てをするほとんどの動物の子供は、口や鼻の造作は小さいが目はパッチリと大きく、手足や羽は短くて愛くるしい顔立ちと造形になっている。子供への情愛をより強く親に実感させるためだろう。言い換えれば種や族が違っても、「可愛い」とか「愛おしい」とか思う感情とその刺激は、共通しているということになる。
沼や池に放たれたミシシッピアカミミガメは、性質は少しだけ穏やかな日本在来のクサガメやイシガメの棲息圏をあっというまに奪ってしまった。今では環境省が特定外来生物法に基づいて指定する要注意外来生物だ。つまりアメリカザリガニなどと同様に、生態系を破壊する可能性がある種と見なされたわけだ。
言うまでもなく彼らに罪はない。かつて沖縄ではハブを駆逐するためにマングースを輸入したが、マングースだって命を危険にさらすハブ狩りを好んでするわけじゃない。農作物に多大な被害が出るために、近年ではむしろマングース狩りが奨励されているという。切ない話だ。
実害があるのならある程度は仕方がない。でもそもそもは自分たちの身勝手さが招いた結果であることを、もう少し意識したほうがいい。
アカミミガメのすぐ横に、もう1匹のカメがゆっくりと浮上してきた。かなり大きい。顔が見える。突き出した鼻。スッポンだ。