首都圏動物記のトップへ WEB連載 5

写真・文/森達也

第6回 千葉北西部のカマキリ

 この9月上旬、家の玄関でカマキリを見つけた。腹部の幅が広い。文字通りのハラビロカマキリだ。どこから入ってきたのかはわからない。

 少なくとも珍しい虫ではない。子供の頃からよく目にしていた。飼育したことも何度かある。ただしうまくいかない。大体は数日で飼育をあきらめた。弱らせて死なせてしまったことも一度や二度ではない。なぜならカマキリは生きている虫しか食べないからだ。

 今ならペットショップでミルウォームやフタホシコオロギなどの生餌いきえを入手することはそれほど難しくはないけれど、当時はそんなもの知らなかった(ペットといえば犬かネコの時代だ。生餌が必要とされる蛇やトカゲを飼育する人などほとんどいなかったと思う)。だから小学生だった僕は、野原で小さなバッタやクモなどを捕まえてきてカマキリの餌にしたけれど、探す手間もかかるし、バッタやクモも飼育したことがある虫なので、それを餌にすることに何となく違和感があった。
 毎年雪が解け始めた春先には、丈の低い樹木などに生みつけられたオオカマキリの卵鞘らんしょうを枝ごと取ってきて水槽に入れる。部屋の中に置いておくと、3月の下旬くらいのある朝、水槽の中にびっしりとうごめいている小さなカマキリを発見する。毎年恒例の行事だった。

 卵鞘の大きさにもよるけれど、数百匹は生まれたと記憶している。大きさは数ミリ程度。姿かたちは成虫とほとんど同じだけど、よく見ると羽がない。
 そのままにしておくと共食いしてしまう。いずれにせよ数百匹のカマキリなど飼育できるはずがない。だから逃がすことにしていた。でもこのときは考えなかったけれど、暖かい部屋の中に入れていた卵鞘は、自然の状態より少なくとも1〜2週間は早く孵化ふかしていたはずだ。だから野に放された一令幼虫たちにしてみれば、生まれて早々にかなり苛酷な環境に放り出されていたということになる。

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