今回は少し遠出して山梨県の山中だ。ここまでくれば何だっている。鹿もいればイノシシもいるし、タヌキやキツネ、イタチやヤマネだっているはずだ。
と書き始めてからふと不安になった。山梨県の山中を首都圏にしてしまってよいのだろうか。何となくではあるけれど、首都圏の定義は、東京と埼玉、千葉と神奈川くらいまでのような気がする。
我ながらあきれる。連載のタイトルにしておきながら、首都圏の正確なエリアを僕は把握していなかった。今さらだけど調べてみよう。
地理上の区分では、山梨県は関東ではなく、長野や岐阜、新潟や石川、静岡などと同じグループで中部(甲信)地方に属する。
ところが行政上の区分では関東地方になる。首都圏整備法によれば、首都圏の定義は関東地方1都6県に山梨県を加えているからだ。具体的には、東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、そして山梨だ。
というわけでぎりぎりセーフ。なぜ山梨県を首都圏に加えたかは不明だが、甲府から東京までは高速を飛ばせば1時間程度だし、山梨県の県境の一部は東京都に接しているから(群馬県や茨城県、そして栃木県は接していない)、首都圏とするほうが自然かもしれない。
とにかく今回の舞台は山梨県。エリアでいえば小淵沢の近くだ。国道から外れた山中。目の前には甲斐駒ヶ岳がそびえている。その山中に1軒だけぽつんとある山小屋のベランダ。時刻は午前9時くらい。白い漆喰の壁に貼り付いている1匹の茶色い物体。僕は近づいた。
蛾だ。
子供の頃から虫や小動物は常に水槽や飼育箱の中にいた。でもこの虫を飼ったことは一度もない。たとえばカブトやクワガタを捕獲するために夏の夜に街頭の下に行く。でも簡単には見つからない。うじゃうじゃといるのは大小取り混ぜた蛾の仲間だ。でも捕まえようとは思わなかった。もっと直裁に書けば、触りたくない虫のひとつだった。
「蛾」の音読みは「ガ」。考えたらこれも妙な名前だ。一文字の名前は他に蚊がいる。蛾はこの蚊に濁点。何となく禍々しさが強調される。まあこれは、蛾の負のイメージがあるからこそ、言葉の響きが良くないと思ってしまうのかもしれないけれど。
とにかくどちらかといえば苦手な虫だ。もしも目の前に蛾が飛んできたら、僕はきっと思わず悲鳴をあげるだろう。その理由のひとつは、「毒の粉を撒き散らして」的なイメージがあるからだ。でも実際にはどうなのだろう。