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森達也の首都圏動物記 第8回 新宿のカラス

 日本の都会に暮らすカラスのほとんどはハシブトガラスだ。額の辺りが突き出しているし、くちばしが太くて歪曲(わいきょく)している。彼らはそもそも森林に暮らすカラスだ。都会に暮らすカラスとしては、もう一種、ハシボソカラスがいる。こちらはどちらかといえば田園地帯に多い。
 ハシブトは雑食だ。特に肉系が好きなようだ。ハシボソはどちらかといえば菜食。でもこれも、住む環境によって食性が違うだけで、実はほとんど大差ないとの説もある。

 カラスを飼っていた友人がいる。路上で雛を拾ってしまい、大きくなるまでのつもりで育てたら、すっかり馴れてしまったそうだ。とにかく遊ぶことが大好きで、音の出る玩具には強い興味を示したという。そういえば以前、上野公園で、ハトならぬカラスの餌付(えづ)けをしていたおじさんを見かけたことがある。カラスは百羽近くいた。かなり壮観、というか遠目にはぎょっとする光景だ。近づくとカラスたちは、いったんは木の上に飛び上がったけれど、すぐにまた近づいてきた。
「ハトなんかより面白いんだよ。カラスは利口だからな」
 おじさんはビニール袋に入ったパンくずを投げながら言った。確かに傍で見ると、カラスの目には表情がある。常々思っているのだけど、ハトやニワトリの目は、何となくメカニカルというか情緒がどうしても感じられない。一口にすれば爬虫類(はちゅうるい)的(鳥と爬虫類はかなり近い)。カラスはその意味では、何となく哺乳類的な雰囲気がある。つまり情緒の領域が近い。

 宇都宮大学農学部の教授でカラス研究の第一人者である杉田昭栄教授によれば、カラスの脳は鳥類で最も進化しているという。各鳥類における脳重を計測したところ、ハシブトおよびハシボソガラスの大脳は他の鳥類に比べ、重量とその割合、および脳内比が、圧倒的に高いことが明らかとなった。

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