不老不死は昔から人類の夢だった。秦の始皇帝から命じられて蓬莱の地にあるという不老不死の薬を求めて日本に流れ着いた徐福は、何もわざわざそんな遠くまで来なくとも、家の近くの池や沼の水をすくって中にいる細菌やアメーバなどを献上すればよかったのだ。はい殿下これが不老不死でございますって。まあその後にどんなことになるかはわからないけれど。
この話題になると終わらない。がん細胞が不老不死であることも書きたくなる。あるいはテロメアとかアポトーシスとか、生命の深淵には哲学的考察がどうしても滲む。いずれ回を改めて考えよう。今回はここで話を戻す。
ナナフシは単為生殖だ。有性ではあるけれど、メスだけで生殖してしまう。生まれた子供は当然ながらXX染色体しか持っていない。だからオスは生まれない。ただし完全な単為生殖ではない。時おり交尾もするらしい。だからオスはごく稀に見つかる。
ならばそのオスは、いつどうやって生まれるのか。メカニズムとしては染色体の減数分裂にその理由がある。でもそれを書き出すと終わらなくなる。だからそこは省く(今回は省いてばかりだ)。
たとえばミジンコの場合、環境が好適の場合にメスは単為生殖でメスばかりを産む。環境が劣悪になったり個体数が増えすぎると、オスが産まれて有性生殖をする。アリマキは春から夏にかけてはメスばかりで単為生殖を行うが、秋になるとオスが生まれ有性生殖を始める。カイガラムシやオオシロカゲロウなどもこの系譜だ。でもナナフシの場合は、季節や環境の変化に合わせてのこのような規則性はどうも伺えない。気まぐれなのだ。
どちらかといえば高等な生きものには単為生殖は少ないと考えられるけれど、でもオガサワラヤモリやブルーミニメクラヘビなど、爬虫類には時おりいる。最近ではコモドオオトカゲという大物中の大物が、単為生殖をしていたとの実例が、イギリスの科学雑誌「NATURE」で紹介されていた。魚もいる。今年5月には、アメリカのヘンリー・ドアリー動物園で飼育されていたメスのシュモクザメが、単為生殖でこれまで子供を産んでいたことが明らかになった。仔ザメのDNA解析をしたところ、母親とまったく同じだったという。
哺乳類の単為生殖は不可能と思われていたが、東京農業大学の河野友宏教授たちのチームが、つい最近マウスの単為生殖に成功した。それに考えたら、聖母マリアの処女懐妊も単為生殖だ。カイガラムシやシュモクザメと同等に並べたら罰が当たるかもしれないけれど。