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森達也の首都圏動物記 第9回 我孫子のナナフシ

 とにかくナナフシは、その外形だけでなく、生態的にもとても奇妙な位置にいる昆虫だ。迂闊に触ると脚がポロリと取れる。つまりトカゲの尻尾のように自切する。写真のナナフシも、左の第二脚がない。触ったからではない。見つけたときからこうだった。たぶん鳥かカマキリにでも襲われかけたのだろう。

 トカゲの尻尾と同様に、この脚もまた再生する。脱皮のたびに少しずつ長くなり、だいたいは数回の脱皮で元に戻るようだ。写真のナナフシも少しだけ再生しかけている。そしてよく見ると、その短い脚の先端がくるりと輪のようになっている。これも特徴らしい。理由はわからない。何かに引っかかったりして不便じゃないかと思うのだけど。何よりも輪の形は、生きものにおける造形としてはとても珍しい。他に思いつくのは豚の尻尾。でもあれは漫画だ。

 一般的にはナナフシは、擬態の上手な虫として語られることが多い。確かに樹木の葉や枝の上にいるときは、見つけることは難しい。指の先を近づけると、葉の上で脚を踏ん張りながら、なぜかユラユラと揺れる。ナナフシを見つけるたびに僕は指先をその顔に近づけているが、ほとんど例外なくこのユラユラをやる。意味は不明。脅しの一種ではと考えたが、脅しにしてはあまりに中途半端だ。風に揺られている木の枝を擬態してるとの説もあるけれど、それもやっぱり中途半端。風のないときにはかえって目立つ。実際に僕がナナフシを見つけるときは、たいていはこのユラユラをやっているからだ。
 とにかく妙な虫だ。一言にすれば虫っぽくない。前回のカラスについては、皮膚の内側に別の生きものが潜んでいるような気がしてくると書いたけれど、ナナフシの場合は、皮膚の内側に地球外生命体が潜んでいるような気がしてくる。

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