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大人の科学実験村 第2回 トラックピンホールカメラで、日本一の富士を捕らえろ!

本日は快晴なり!絶好の富士撮影日和だ!

 ところが翌日午前9時半、実験村村民史に深く長く刻み込まれるであろう奇跡が起こったのだ。日本一のマウント富士を見上げる位置にあるJR御殿場駅に集合した全員が、目を見張る。青く晴れた秋空にくっきりと、頭頂に雪を冠した富士が輝いていたのだ。本日の撮影は成功まちがいなし! と湯本が笑みを見せる。富士もでっかく笑っていた。

 が、しかし! と記するしかないのが残念である。富士の山肌が太陽光に熱せられ、それに触れた空気が急上昇したためだろう。なんということだ、全員が出発準備をしているわずか30分の間に、富士に雲がかかってしまったのだ。その状況はビデオ画面を早送りで見ているに等しかった。ボーゼンとしている我々の前から、富士の姿が消えたのである。

 慌てた湯本村長の号令がかかり、トラックピンホールカメラ隊は、山中湖に急いだ。


富士五湖、山中湖のほとりから富士を狙う!

 そうすると再びの奇跡である。山中湖の向こうに富士が微笑んでいたのだ。作業可能な空き地を見つけ、役員、村民一丸となって撮影の準備に取り掛かる。コンテナ内部に用意した現像液が容器から漏れるという小さなトラブルは発生したものの、前日の予行演習が功を奏し、慌てずうろたえず全員が素早く確実に作業を遂行し、準備完了。天気が良いので、露光時間は2分。これなら啓朗クンもガマン可能。富士、そして山中湖に映った富士、その前で記念写真をパチリが、西脇主任の理想だったが、やや風があり湖面が揺れていたため、湖面に映る富士を見ることはできなかった。それでも昨日の小雨に比べれば、本日の天気は奇跡である。シャッターが切られた。

 ところが、しかし。と、またもやそう記さなければならなくなってしまったのだから、神様はイジワルである。

 富士と空とのコントラストが低く、うっすらとしか富士が写っていなかったのだ。人物をしっかりと撮るには露光時間が十分に必要。だが、それだと富士に光が当たりすぎて、その姿が飛んでしまうという二律背反の罠に、我々ははまってしまったのである。失敗ではないが、万歳の大成功では決してない。


 
20. トラックの中のスクリーンにカラーで映し出された景色。高感度のデジカメで撮影。
21. シャッターを開く自信満々の湯本村長。天気が良いので3ミリのピンホールで露光時間は10分。(ISO200でF8 1/640)22. 撮影中。中の撮影班もトラックを揺らさないように、10分は動けない。 23. 期待に胸が躍っても動いてはいけない。

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