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タネの話 写真・文/埴沙萌(はにしゃぼう) プロフィール等は「埴沙萌の植物記」

タネなしバナナとタネなしスイカ~突然変異と品種改良

 いま、わたしたちが食べているバナナの果実には、種子がありません。しかし、タイなどの熱帯地方の山に生えている野生のバナナの原種には、大きな種子がたくさん入っています。
 写真(1)は、原種のバナナの皮をむいたもので、黒いのが種子です。写真(2)は、アズキとバナナの種子をくらべてみたものです。写真(3)は、一つのバナナの果実に入っていた種子で、250粒ありました。食べると甘くておいしいのですが、口のなかが固い種子でいっぱいになって、砂利をほおばっているようでした。

 そんな種子がいっぱいのバナナが、いま食べているような種子の無いバナナになったのは、突然変異によるものなのですが、遺伝学的に三倍体に変化したからだと発見したのは、たしか遺伝学者の故木原均博士ではなかったかと思います。
 ふつうの生物は男性の染色体一組と、女性の染色体一組とが受精のときに合体して二組になっているので、二倍体と呼ばれています。染色体というのは、遺伝子が列んだ帯のようなものですが、顕微鏡で観察するための染料でよく染まるので、染色体と呼ばれています。
 原種バナナの染色体数は、基本的には11×2で22本ですが、三倍体は11×3で33本あるわけです。この三倍体には種子が出来ないことをヒントにして、木原均博士は人工的に三倍体のタネなしスイカをつくりました。

 スイカは一年草なので、毎年人工的に三倍体のスイカの種子をつくって、翌年にその種子を播かなくてはなりませんが、バナナは多年草で、根茎から新しい芽を出します。三倍体の株からは三倍体の芽が出るので、その芽を挿して種子の無いバナナをたくさん殖やすことができます。種子の無いバナナが世界中の熱帯地方で、たくさん栽培されるようになったのは、バナナが多年草だからです。
 現代では品種改良がすすんで二倍体の種子なしバナナも、たくさんできています。三倍体のバナナよりは実の皮がうすいとか、病気につよい、栽培しやすいなどの長所があるようです。

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