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Gakken PRESENTS 大人の科学:製品版

発明発見シリーズ

ベルリナー式円盤蓄音機

製品詳細 実験ハイライト 開発秘話 偉大な発明品、誕生とその軌跡 実験についてのご質問

開発秘話~開発者のこぼれ話~

湯本 博文氏

湯本 博文

科学ソフト開発編集部 企画開発室室長
大人の科学総合プロデューサー
学研 科学創造研究所所長

1977年学研入社。「科学」の編集長として画期的な付録を作り続け、今や「学研のエジソン」と呼ばれる。テレビ出演多数。1999年より現職。

金子 茂氏

金子 茂

科学学習編集部
企画開発室
大人の科学編集長

1982年学研入社。「科学」「学習」編集長として数々の付録開発に当たり、数多くのヒット企画を生む。2000年より現職。

CD-ROMとの出会い

「今回の円盤蓄音機を開発するにあたって、エジソンのコップ蓄音機とは異なる点で苦労があったようですが」

湯本: 特に、今回は、ピックアップ部分を安定して動かすことに、非常に苦労しましたね。エジソンのときは、ステンレス製のボルトでうまくいったので、ベルリナーでもまずこのボルトを使ったのですが。
 初期の試作では、長いステンレス製のボルトの上にナットを半分に切ったものを乗せて、ボルトを回転することにより、ピックアップを平行に移動しようとしました。ところが、どうしても余計な振動が出てしまいます。蓄音機は、コップをふるわせる音のわずかな振動を針に伝えて溝を刻むわけですので、ピックアップを載せている台が移動するときに余計な振動が生じると、それが音に大きな影響を与えます。そのため、極力振動がないような機構を考える必要があるのですが、エジソンではうまくいったステンレスのボルトは、ここでは役に立ちませんでした。  このタイプの試作機でも、何度か録音・再生には成功したのですが、実に不安定で、とても量産できるようなものではありませんでした

「極力振動を与えないことが課題だったのですね」

湯本: そうなんです。「ピックアップを振動させないように滑らかに平行移動する」ことを追いかけて試行錯誤した結果、うまい方法を見つけました。それは、スライドを作り、そのスライドに、のこぎりのようなぎざぎざをつけた横長のギヤをセットし、そのギヤ(ラック)にかませたピニオンギヤをゆっくり回転させるという方法なんですよ。これで何とか平行移動はクリアできたのですが、次は、ピックアップを安定させるのにも相当な苦労が待ってたんですよね。

 エジソンの円筒タイプでは、針が刻む溝は、ほぼ直線です。ところが、ベルリナーの平板タイプは、円を描くわけですから、ベルリナー型の針先にはエジソンのときに比べてかなり複雑な力がかかるんですよね。これをピックアップを安定させながら移動するには、かなりの工作精度が要求されることになって。当初、エジソンと同じくシナベニヤという木材でボディを作ることにこだわっていたのですが、どうしても要求される精度を木材でクリアすることができず、この段階で、木材を断念してプラスチック製に切り替えることを決断しました。

 プラスチックを使うことでだいぶ楽になったのは事実ですが、次にピックアップを支えるアーム部分の精度を上げるのもやはり工夫したポイントです。ベルリナー型のアームには3箇所の可動部分があるため、それぞれにガタがあると正確に溝を作って(溝を追随して)くれません。安定した動きになるまでにはだいぶ試行錯誤がありました。

金子:試作を作っては、テスト。改良してはテスト。というのを何度も何度も繰り返しましたよ。私たちのスタッフの一人は、毎日仕事場で録音のたびに歌を歌っていたら、それが外に聞こえて、町内で「いったいあそこは何やってるんだ??」と話題になって非常に恥ずかしい思いをしたそうです。それくらい何度も何度も繰り返して精度を上げていき、完成したのが、今回の商品です。

「なるほど。今回は身近なCD-ROMに録音できるという点も面白いですね」

金子:最初はカップラーメンのふたやソフトファイルなど、柔らかい素材を中心に実験していました。硬い物は浅い溝しか彫れないから録音に適さないだろう、と考えていたからです。
あるとき、身近な円盤として不要なCD-ROMがけっこう周りにころがっているのに気が付きました。ちょうど、大人の科学ファンの方から「雑誌などにつくCD-ROMが不要品となってけっこうたまってくる。何か実験に使えないだろうか?」というメールをいただいたこともあり、これを使ってみよう、という気になりました。CD-ROMはポリカーボネイトという硬い素材でできているので、録音には不向きという思いがありましたが、「百聞は実験にしかず」の精神で、ともかくやってみました。
すると、意外や意外、今までに最も良好な音質が得られました。音質を上げるには素材の硬度以上に、表面の平滑度が重要なファクターになるということもわかりました。同時に「デジタルの象徴ともいえるCD-ROMにアナログで録音する」という魅力的なコンテンツが加わったのです。

▲ピックアップ部分を振動させずに平行移動させるため、開発された仕組み

「ありがとうございました」

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