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Gakken PRESENTS 大人の科学:製品版

電子キットシリーズ

マイキット150 復刻版

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開発秘話~開発者のこぼれ話~

湯本 博文氏

湯本 博文

科学ソフト開発編集部 企画開発室室長
大人の科学総合プロデューサー
学研 科学創造研究所所長

1977年学研入社。「科学」の編集長として画期的な付録を作り続け、今や「学研のエジソン」と呼ばれる。テレビ出演多数。1999年より現職。

金子 茂氏

金子 茂

科学学習編集部
企画開発室
大人の科学編集長

1982年学研入社。「科学」「学習」編集長として数々の付録開発に当たり、数多くのヒット企画を生む。2000年より現職。

過去のテイストを残しつつ、現代に生きるマイキットを復活

「お客様から最も復刻の声をいただいていたと言う『マイキット』が晴れて発売となりましたね 」

湯本:はい、おかげ様で発売にこぎつけました。しかし復刻となると、金型や材料費がかさみ小売価格が3万円を超えそうになってしまったり、当時のパーツが手に入らなかったりと、当初から苦戦を強いられました。結局メカモの時と同じように『純粋な「復刻」ではなく「復活」』という線に開発の方向を変えることにしました。商品のテイストを残しつつ、現代にマイキットを「復活」させるという方向性です。

「ご苦労が絶えなかったようですね。よろしければ、製品化までの苦労話をご披露いただけませんか!?」

湯本:どこからお話ししましょうか…。まず、復活と言っても昔のマイキットのテイストを残すため、過去にどういう回路が実現されていたかを知ることが必要ですから、開発陣は過去のマニュアルから、回路を拾う作業を行いました。すると、社内にマイキットのマニュアルがそろっておらず、例によって(学研電子ブロック復刻のときもそうでしたが)一部をネットオークションでゲットするという情けない場面もありました。

金子:結局、調べていく中で「今手に入るパーツで昔の回路を含めて150くらいの実験ができるようにする」ことなりました。ところが、昔のパーツを今手に入るパーツに置き換えただけでは、昔のマニュアルどおりに結線してもそのままでは動作しません。例えば、昔のゲルマニウムトランジスタで作られた回路を、今のシリコントランジスタの部品に単純に置き換えられるわけにはいかず、他のパーツを別のものに変えるのか、それとも回路自体を変えて動くように調整するのか等を考えながら一つずつチェックしました。気の遠くなるパズルのような作業でしたね。

湯本:地道な作業をしながらも、一方では「せっかく復活させるのだから、やはり新しい部品も採り入れたい」という願いもありました。復活したメカモに赤外線リモコンをつけたように、やはり何か現代的なパーツも入れて、オリジナル回路を組めるようにしたいと思ったのです。

▲回路のチェックに4ヶ月もかかった<試作品第1号

▲本体を2分割したデザインを採用<試作品第2号

▲ボディ(木の箱)をつけた<試作品第3号

「現代的なパーツとは何を組み込まれたのですか?」

金子:1つ目は現代に生きるマイキットを作るわけですから、新しい技術も入れ込もうと「ショットキーダイオード」を追加し、携帯電話を使った実験を加えました。
2つ目は「トランジスタを交換可能」にしました。以前のマイキットはトランジスタが半田付けされていたので、もし破損をした時、お客様レベルでの交換はなかなか難しいところがありましたが、今回はメンテナンス性も考えてトランジスタは差し込み式とし、もし壊れても簡単に取替えが出来るような設計を取り入れました。
3つ目は「電圧計」を追加しました。マニュアルの回路図だけだと間違いに気づきにくいのですが、電圧計を使えば間違いを簡単に発見することができるようにしました。

「着々と回路ができあがっていったわけですね。ところで、今回のボディは“木”を使われていますが、何かこだわりがあったのですか?」

湯本:初期のマイキットは木製の箱に入っていましたので、今回もそれにならいました。ところで、箱をつけるというのは、ただセッティングするだけの単純な作業に思えますが、何かと様々な問題点が浮上するのです。一番改善を要したのは操作性の部分です。写真<試作品第3号>を見ていただくとわかりますが、底部分のパネルが木箱のかなり底の方に位置してしまっています。こんな場所に操作する部品があると、箱のヘリに手が引っかかって操作しにくくなります。また、実際に箱に入った状態で配線をしてみると、操作しにくいパーツの配置などがかなり見えてきます。このようにして箱デザインもリファインしていくわけです。

金子:さらにこの段階で、昔のマイキットにはなかった「ヒューズの回路」を追加しました。これは、学研電子ブロックEX-150復刻版を購入いただいた人からたくさんの問い合わせや部品交換の依頼を受けた経験から考えて、最近は昔に比べてアナログ回路の知識を持っている人が少ないのではないかという感触があったからです。かなり乱暴な回路をいきなり作って、トランジスタを破損してしまう人がいらっしゃいます。復刻版とはいえ、教材という側面が強い「マイキット」ですから、現代に復刻する場合は、それなりの配慮をした方がいいのではと考えたからです。

「試作の段階で、新機能や回路を追加されたようですが、結局昔の回路はどれぐらい使われることになったのですか?」

湯本:150回路のうち、昔のマイキットからほぼそのまま流用できた回路は約半数しかありませんでした。ただし新回路といっても、あくまで「アナログ回路の基礎の勉強に最も重要な回路」という線ははずしておりませんので、入門者への教材としても最適な回路が選定できたと思っています。

「マニュアル制作にも大変苦労されたとの情報をいただいていますが、実際、いかがなものだったのですか?」

金子:前回の学研電子ブロックEX-150復刻版のときは、昔の回路がそのまま活用できたと言うこともあり、マニュアルも基本的に復刻ということでベースとなるものがありました。しかしマイキットは、半数は過去になかった新回路であることと、旧版にあった回路でも以前のマニュアルのスタイルがまちまちであまり参考にならなかったため、完全に1からのマニュアル制作を行いました。これまた、地道な作業を延々と続けることになりました。実際の作業の中で、結構気を使ったのは、結線のリード線の長さがあまり長くならないように工夫するという点でした。というのも、マイキットは構造上割とノイズが発生しやすいという特性があります。バネにリード線をはさんで結線しますが、ちょうどそのあたりがノイズの発振源となってしまうのです。特に、アンプやラジオ、ワイヤレスマイク、発信機といった回路は、このノイズを拾いすぎるといろいろな影響があります。このような回路ではコードがアンテナの役目をしてしまうため、本体からのノイズの影響を最小限に抑えるためには、極力配線を短くするように、配線順序に気を使わないといけませんでした。

▲マニュアル校正中

「そしてやっと、マイキットが完成したというわけですね。それでは最後に、読者の皆様へメッセージをいただけますか!?」

湯本:マイキットは、歴史的には学研電子ブロックより先に開発し販売されていた商品ですので、初歩的なイメージをもたれるかもしれません。しかし、今回復刻したマイキットは、先の学研電子ブロック復刻版の時のノウハウや教訓も取り入れて、ヒューズ回路の導入など細かな修正が加えられています。その結果、学研電子ブロック復刻版に比べると、上級者にも対応できるにも関わらず、初心者にも優しいという商品に仕上がったと自負しています。上級者は独自の応用を考える楽しみが、初心者は回路の原理等を学びながらアナログ回路についての理解を深めることができます。是非たくさんの方に、この喜びを味わっていただければと思います。

「ありがとうございました」

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