写真(2)は、生長した果実の断面です。子房の皮は固い殻になって、生長した種子を守っています。大きくなった種子の先端のとがった部分は、胚珠が母体から栄養分をもらっていた、ヘソの緒にあたるところです。なにかのアクシデントがあって、胚珠が受精できないこともあります。そんなときには子房だけが生長して、種子の無い果実になります。
生長した種子をおくりだすのも、果実のしごとです。できるだけ遠くへ行けるように、いろんな旅行用具をくふうしています。この連載『タネの話』では毎週、そんな果実と種子のことを書いてゆきますが、文章のなかの果実は実(み)のことです。種子はタネのことです。