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タネの話 写真・文/埴沙萌(はにしゃぼう)

果実のほんもの・にせもの リンゴの真果と偽果

 写真(1)はリンゴのあの、おいしい果肉をとりのぞいた、ほんとうの果実です。写真(2)は、それを乾かして1ヵ月ほどたったものです。
 植物図鑑や果物の本などには、わたしたちが食べる、リンゴのおいしい実の部分は花托(花の台で、子房をとりかこんでいるものもある)が肥大生長したもので、ほんとうの果実ではない。こういうのを偽果(ぎか=にせものの果実)と呼ぶ、と書いてあります。

 ほんとうの果実というのは、子房が生長したものですから、花托が肥大して果実のようになったものを、偽果と呼ぶのはわかります。それじゃあ、リンゴのほんとうの果実(真果=しんか)は、どんな形をしているのか、それを知りたくて、いろんな本で調べてみましが、写真もイラストも、文章も見つかりませんでした。

 自分でやってみるしかないというわけで、リンゴの甘くておいしい果肉を、カッターナイフで丁寧に削りすすんでゆくうちに、ちょっと固い部分に行き当たりました。その固い部分はそのままにして、柔らかくて削りやすい部分を削ってゆくうちに、写真(1)の形が出てきました。そう、リンゴをタテ切りにすると芯のまわりに楕円形の線が見えますが、その部分です。子房が生長してできた、ほんとうの果実です。

 この真果は、やがて写真(2)のように乾いて、5枚あるヒダのなかからタネが出てきました。果実のつくりは、朔果と呼ばれているカタバミやスミレと同じで、リンゴでは、その朔果を肥大した花托がつつんでいる、といったつくりになっているわけです。

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