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大人の科学メールマガジン No.20              平成15年9月2日発行
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 こんにちは。学研の湯本です。ご無沙汰しております。久しぶりのメールマガジン
となってしまいました。何とか8月中に1回出そうと思っていたのですが、いろいろと
仕事が重なってしまい、ついに9月になってしまいました。お待たせいたしまして申
し訳ございませんでした。

- Contents -
  01 -「弓曳童子」開発秘話(2)
  02 -「マイキット」「メカモ」復刻版情報
  03 -「大人の科学マガジン」03号発売決定しました! 付録は・・・


【01】……………………………………………………………………………………………
  「弓曳童子」開発秘話(2)
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 8月13日に、ようやく最初の金型で作られた量産見本(Try1を略してT1と呼んでい
ます)が私の手元に届きました。早速チェックを開始しましたが、思った以上に良い
仕上がりとなっており、本当に安堵しました。すでに改良点を指示して金型の修正が
進行しています。マニュアル作成も佳境に入っており、編集部一同大忙しの毎日で
す。
 今回は、このT1の画像をご覧にいれます。

「弓曳童子」
=> http://shop.gakken.co.jp/otonanokagaku/mailnews/img/yumi0.jpg

 顔は、監修いただいた九代目・玉屋庄兵衛さんの作品です。見る角度によって表情
が変わるので、まるで生きているようです。また、髪の毛もかなり高級感のある素材
を使うことができました。着物、彩色などもほぼ完成形に近い状態となっておりま
す。


 さて、前回のメールマガジンで少しお話した、「複雑な機構を簡単な機構に」とい
う部分についてお話したいと思います。

 この「弓曳童子」の基本的な機構は、ゼンマイの動力で回転する軸につけられたカ
ムがてこを動かし、てこの先に結ばれた糸が体の各部をひっぱり、一連の動作をする
というものです。開発にあたっては、このカムとてこをどう再現するかというのがテ
ーマでした。

 オリジナルの複雑なカムとてこの機構をそのまま再現すると、とても組み立てるの
が難しくなり、さらに調整も非常に困難になります。これでは「キット」として販売
するにはあまりにも無理があります。そこで、今回は、てこを「カム板」という形の
部品に変えて、これを重ねて一つのシステムを形成するようにしました。

 実際には、7つのカムに7つのカム板を組み合わせて動作させるようにしました。
詳しくは、この図面をご覧いただければ理解いただけると思います。

図面1 カムとカム板
=> http://shop.gakken.co.jp/otonanokagaku/mailnews/img/yumi1.gif

図面2 ギアとカム板、カムのボックス
=> http://shop.gakken.co.jp/otonanokagaku/mailnews/img/yumi2.gif


 この、「カム板」の先に糸を結び、カムの動きを体の各部に伝えます。ゼンマイの
動力で動く軸にセットされたカムの動きに連動したカム板が順番に動き、そこに結ば
れた糸が体の各部を動かしていきます。これが、弓を曳いて矢を射るという一連の動
作の「からくり」です。

 さて、今回の「弓曳童子」でもう一つ苦労した部分は、カム板に結ばれた糸の部分
です。この糸の長さが、一連の動作に非常に影響を与えます。そのため、組み立てた
後に糸の長さを調整しないといけません。もともとの試作品は、ねじでこの糸を固定
するように作っていたのですが、これで糸(全部で6本)を調整するのは非常に大変
な作業になります。そこで、今回は、この糸の調節をギターの糸巻きのような機構を
用意して調整できるようにしました。

*前回のメールマガジンで、「7本の糸」と書きましたが、6本の誤りでした。カム板
は7枚あるのですが、そのうち1枚は、糸ではなく直接体の一部に接続して動くよう
になっております。また、2枚のカム板が1本の糸の両はしに結ばれていますので、
厳密には5本の糸と言った方がいいかもしれません。お詫びして訂正いたします。

 これらの工夫で、ようやくキットとして一般の方に作っていただけるレベルのもの
が出来上がりました。それでも今回の弓曳童子は、作って、調整をするのにそれなり
の時間がかかります。前回の「大江戸からくり人形」(茶運び人形)にくらべれば難
しいレベルです。ただ、このメールマガジンをお読みの皆様なら、この過程を十分楽
しんでいただけるのではないかと思います。

 間もなく、2つ目の量産見本(T2)が来る予定です。近いうちに発売日などのアナ
ウンスができると思いますので、ご期待ください。


【02】……………………………………………………………………………………………
  「マイキット」「メカモ」復刻版情報
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 さて、だいぶ間が空いてしまって申し訳ございませんでした。この間、ベルリナー
式円盤蓄音機、学研電子ブロックの拡張パーツ、弓曳童子と、立て続けに新商品を開
発し、その間をぬって、「マイキット」復刻版も作業を進めておりました。以前マイ
キット150を復刻することに決定したことはお知らせしましたが、これまでのところ
パーツ選定が終了し、回路のチェックを行っています。復刻版ですので、もともとの
150回路は残っているのですが、これを新しい部品ですべてチェックしなければなり
ません。実はこの作業に4人がかりで2か月もかかってしまいました。

 チェックの結果、かなりの回路に問題が生じました。これは、当時の部品と今の部
品の性能が違うことに起因しています。たとえば、当時ゲルマニウムトランジスタ
だったものが、今はシリコントランジスタになっておりますので、これらの性能の違
いなどから動作しない回路がたくさん出ています。今は、これを一つ一つ洗い出し
て、動作しないものは回路を作り直すという作業の真っ最中です。すべての回路が
フィックスしてから、マニュアルの製作となりますので、発売まではまだかなり時間
がかかりそうです。

 一方、あまりお知らせしていなかったメカモの方ですが、実は、こちらは非常に順
調に開発が進んでいます。数あるアイテムの中から、クラブ(カニ)、センチビート
(ムカデ)、インチワーム(尺取り虫)の3種類をまず第一弾として手がけることに
決定いたしました。

 クラブ(カニ)は、かなりのレベルの試作ができてきておりますので、写真をご覧
いただきます。

メカモ試作品(カニ)
=> http://shop.gakken.co.jp/otonanokagaku/mailnews/img/meka_1.jpg

 この写真は、一番最初に作った手作りの試作品です。以前のメカモは、0.7mm厚の
鉄にニッケルメッキをしたものが素材に使われていましたが、今回は1.5mm厚のアル
ミニウムを素材に使うことにしました。この変更で、以前のものより軽くて頑丈なも
のになります。

 また、以前のメカモはリモコン操作でした。写真の試作品もリモコンのスイッチが
ついておりますが、今回はすべて赤外線リモートコントロールで動かすように変更い
たします。

 このように、メカモシリーズは、完全な復刻というよりは、今風にアレンジしたメ
カモになります。発売は、おそらく来春から順次ということになりそうです。今はと
りあえず上記の3つの発売の予定ですが、今後は全くの新作にもチャレンジしていき
たいと思いますので、ご期待ください。


【03】……………………………………………………………………………………………
  「大人の科学マガジン」03号発売決定! 付録は・・・
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 7月17日に発売になりました「大人の科学マガジン 02号」ですが、こちらもおか
げさまで好評をいただいております。そのため03号の発売も決定し、編集部では早く
も03号の付録、本誌の企画で大忙しになっています。03号の付録は、「ピンホールカ
メラ現像セット」、発売日は12月3日の予定です。こちらもご期待ください。


「大人の科学マガジン 02号」の内容、お求めは下記にてお願いいたします。

大人の科学マガジン 02号
=> http://shop.gakken.co.jp/otonanokagaku/magazine/index.html

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=> http://shop.gakken.co.jp/shop/order/k_ok/start.asp


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(株)学習研究社
科学学習編集部企画開発室 湯本博文
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