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大人の科学実験村 第3回 雪のパラボラアンテナで海外の衛星放送を受信せよ!

作業開始と同時に⋯ハプニング続出

雪も溶け始めるほどの春の陽気の中、開村!

これが実験村考案シールド工法だ!

トンネルの掘り方に、作りたいトンネルと同じ径の歯(シールド)を回転させながら岩盤を掘り進むというシールド工法がある。そこで、パラボラアンテナと同じ放物線を持つ板を回転させながら雪を掘り進み、アンテナを作ろうというのが今回の計画。しかし、その肝心要のシールドを学研本社に置き忘れてきてしまい、さらにはチューナーまで壊れ、実験は一気に暗礁に乗り上げたのだった。

 車山高原スキー場の山の頂を正面に見上げ、スキーコースから約50mほど離れた雪の斜面に立ち、午前11時に湯本村長が第3回実験村の開村宣言を発した。空は快晴。あの辺りに我々がねらうゴリゾンが浮かんでいるはず、と青い宙の一点を村長は指差した。読者代表村民の稲垣、鈴木、脇田がその指先に視線を伸ばす。ニカッと余裕の微笑みを見せ、村長は作業開始! の大声をぶっ放したのである。

 が、実験日和の快晴が災いして雪が少ないのだった。巨大パラボラを作るには、大量の雪を集め、小山になるほど積み上げなければならない。手作業で雪をかき集めるのは重労働過ぎる。そこでスキー場の人にお願いし、圧雪車で雪の小山を作ってもらった。横穴を掘れば、村役員及び村民計6名が全員入れる雪洞ができるほどの小山である。西脇主任が見上げて、これはデカイとつぶやいた。

 その南向き表面を方位角168.6度、仰角47.5度に、最初はややアバウトに合わせ少し固めつつ平らにする。いわゆるお椀型の緩やかな凹面を掘る。凹面の中心の一番深いところを表面から65cmにすると、それが直径3mのパラボナになるのだが、しかし。金子助役が突然、西脇主任の方を振り返り、怪訝な顔で問いただしたのである。

村をゆるがすハプニング続出で、まさかの実験中断!?

 ななんだって、雪に凹面を掘るために用意していたシールド板がないだと? 西脇は青ざめながらうなずいた。会社に忘れてきたみたいです…。だから車がちびっと軽かったのである。実験日和の暖かい日差しの下で、村民の気持ちがいきなり凍り付いてしまった。

 西脇主任は新婚3か月である。お前、そのせいで気が弛んでるんじゃないかあッ! と口にはしないが、金子助役がそういう視線を主任に差し込み、マズイ、大変によろしくない雰囲気が漂い始めている。それを察した斎藤氏が、じゃあ、手掘りでやりましょうと提案。やらねばならぬの意気込みで参加の村民3名が即座に賛成の手をあげる。主任のチョンボを村民が優しくフォローしようとしているのだった。湯本村長が決を下す。「会社に電話して、その板を赤帽さんに頼んでこっちへ届けてもらえ。届くまでの間、各員交替で手掘りだ!」

 あいやあ⋯と嘆きつつも金子助役が雪の小山に飛びかかった。この助役、結構気持ちの切り替えが早かったりする。が、しかし。第2のトラブルが発生してしまった。チューナーが作動しないのだ。その上、テレビまで故障、電源さえ入らない。車で運んで来たときの振動が故障の原因か。再び、ジト⋯ッと嫌な空気が全員を包み込む。このままのムードで、やれる作業だけをとりあえず続行するのは、かえって無力感を生み出すことになりかねない。

「仕方ない、今日はここで作業中止。明日だ、明日。明日、朝から頑張ろう!」湯本村長が、本日のジ・エンドを宣言した。この日、斎藤氏は千葉の自宅まで別のチューナーを取りに戻るしかなかった。往復7時間の道のりである。


明日の成功を祈る!
1-2. 出だしからかなり重労働。雪山に、約50度の斜面を作るため、雪を積み上げる。3. 直径3mの円にビニールひもを張ってみる。かなり大きい。4. 輸送の際の振動のためか、雪のためか、チューナーの電源が入らない ! カバーを開けて調べてみたが…。5. 困った時の神頼み。

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