松武さんは、一通りふろくに触れてみて「これは面白い」と唸った。真っ先に、ふろくが改造されていることを指摘して「ちょっと回路なんか詳しい人は、みんな改造したくなりますよね。俺もアンプを買ってきて改造しよう」と、子どものように笑った。
「最近は、創作して遊ぶってことを、みんな忘れているように思うんですよ。すでにできあがっているものを使うだけで目的を達してしまう。それはとても残念なことですね」 楽器とは無縁の人でも、自分の表現したい音楽が作れるように。そんな若い人たちの夢を松武さんはシンセサイザーを進化させるというカタチで応援してきた。
“改造”という言葉に心を躍らせていた子供の頃は、考えて、作って、表現して、楽しむことが、当たり前のようにできていたはず。大人になって忘れてしまった、あの気持ち、きっと、ふろくのテルミンの音が思い出させてくれるに違いない。
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