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Gakken PRESENTS 大人の科学:製品版

発明発見シリーズ

新エジソン式コップ蓄音機

製品詳細 実験ハイライト 開発秘話 偉大な発明品、誕生とその軌跡
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明け方に響いた「メリーさんのひつじ」

「メーリさんのひつじ、ひつじ…」

 アメリカはメンロパークに響く男の声。何事が起きたのかと集まる研究員たち。男は、ハンドルをつかんで錫箔した円筒を回しながら、機械に向かって叫んでいる。やがて歌をやめ、筒を元の位置にもどし、再びハンドルを回し始めた。

 「メーリさんのひつじ…」

 雑音にまじり、男の声が聞こえてきた。驚きで声も出ない研究員たち。やがて沈黙は歓声に変わった。男の名はトーマス・アルバ・エジソン。1877年12月6日のことだ。
 最初の錫箔円筒式蓄音機を完成させたのはエジソンが30才のときだった。この頃はすでに自分の研究所を持ち、100以上の特許を有している。蓄音機の評判は、前年にグラハム・ベルとの電話機開発競争にやぶれたエジソンにとって、特別なものとなった。

 「メンロパークの魔術師」。人々は彼をこう呼んだ。  蓄音機は電話機開発の副産物ともいえた。ベルとの競争にやぶれたこの時期、電話機の音を紙テープに機械的に書き込み、電話がなくても後に電話会社に依頼して電文を送信してもらえる仕組みをエジソンは作ろうとしていた。その過程で「音を記録するのに何も電話に固執することはない。音を記録し、再生すること。それこそが重要だ」と気づいた。

 エジソンの蓄音機は「話す機械」として喧伝され、大いに評判を呼んだ。人々は特別列車でメンロパークを訪れ、時の大統領はホワイトハウスに彼を招いた。
  だが、最初のこの蓄音機は、評判のわりに性能が低く、実用化にはほど遠かった。そんなとき、再びベルがエジソンの前に立ちはだかった。蓄音機の実用化に名乗りをあげたのである。
 ベルは錫箔にかわり、ろうを塗布したボール紙円筒を考案。録音と再生で針を別にするなど音質の向上につとめた。さらに、ゴム管のイヤホンをつけ、聞きやすくするなどの工夫を加え、1888年、実用化に成功した。

▲徹夜明けのエジソン

▲音楽が刻まれた円筒式レコード

▲当時の販売用ポスター

 ベルの蓄音機はエジソンの闘志をかき立てたといわれる。実用化成功を知ったエジソンはその日から不眠不休で開発に取り組み、5夜連続の徹夜作業の末、第2号機のエジソン式蓄音機を完成させた。
 このとき、彼は徹夜明けの姿を写真におさめさせている。顔全体は腫れぼったいものの、目をぎらつかせ、不機嫌そうに自作機の前で頬杖をつくエジソン。
 発明にかける若き日の執念を感じさせるワンカットだ。ほとんど、同時期、第三の男が独自の蓄音機を完成させている。ベルの蓄音機開発に参加し、その後独立して研究に取り組んだエミール・ベルリナーだ。その方式は円盤を用いることで針の縦揺れを横揺れに変えるユニークなもの。音質は落ちるが円盤の大量生産が可能なので安価に製作できる利点を持つ。

 エジソン、ベル、ベルリナー、3人の開発競争はその後も繰り広げられ、やがていくつかのレコード会社に分かれていく。競争は形を変え、品を変え、今も続いている。

 コップ式蓄音機のスイッチを入れよう。
 コップから聞こえてくるくぐもった再生音。それは偉大な発明家たちがしのぎを削った19世紀の音なのだ。

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