「この商品は、“大人の科学”シリーズがスタートのきっかけとなった商品、『エジソン式コップ蓄音機』の新バージョンとなるのですね」
湯本: はい、そうです。『エジソン式コップ蓄音機』の新バージョンとして『新エジソン式コップ蓄音機』は誕生しました。
お蔭様で販売台数も非常に多く、たくさんの方々から様々なご要望が寄せられておりましたので、新バージョン開発には、これまでにいただいた皆様のご要望に耳をかたむけながら開発を行いました。
2000年夏のテスト販売を経て2001年夏から正式発売となり、以後4年間ずっと大人の科学シリーズの象徴的存在となった商品のバージョンアップ版ですから、いろんな意味で気を抜けない商品開発でしたね。
「ボディが木製からプラスチック製へと変りましたね。デザイン的にも一新という感じですが」
金子: そうですね、前作(エジソン式コップ蓄音機)との1番大きな違いが、ボディをプラスチックにしたことです。このため、前作ではコップを使っていたホーン部分も、プラスチックにしました。やはりデザインを重視すると、このホーンの部分は一番のアクセントですので、ここはきちっとプラスチックで成型する必要があります。以前は紙コップを使っていたので、振動板も紙コップがその役割を果たしていたことになるのですが、こうなると必然的に振動板も新しい素材で作らないといけません。
「プラスチックになったために、変更しなければならない箇所が出てきたということですね」
金子: 今回一番悩んだのは、このプラスチックの素材でした。昨年の春頃、この素材をいろいろ集めて実験していたのですが、これがなかなか厄介でした。というのも、振動板ですからそれなりの薄さが必要なのですが、薄すぎると音がビビってしまい、薄ければ何でもいいというものでもありません。また、再生だけなら割と許容範囲が広いのですが、録音、つまり針で音をカッティングするためには、振動板が薄すぎても厚すぎてもうまく行きません。試行錯誤の結果、0.07mmの厚さのPET素材を選び出しました。 |
▲部品の一部。円形がフォーン部分。 |
「今回、針が変ったということですが?」
金子: 針も前作とは違うものを使用しています。前作の針は、普通に市販されている木綿針を使ったのですが、今回はオリジナルです。蓄音機における針先というのは、非常に大切な部分でして、顕微鏡レベル(×100くらいですが)で見て尖っている針が望ましいのです。今回もいろいろな針を試しているうちに、市販の方位磁針を支えている針が非常に尖っていて都合がいいことに気付きました。そこで、この針を作っているメーカーと交渉して、新たなオリジナルの針(太くて尖っている針)を作っていただくことにしました。
湯本: 針と振動板をはじめ随所に改良を加えた結果、以前のものに比べていろいろなタイプのコップに録音できるようになりました。
たとえばアメリカのコップは比較的大きくて丈夫だけど、中国のコップはやわらかくてつぶれやすい等、コップ1つとってもかなりの差があります。以前のタイプだと、このような海外のコップには対応できなかったのですが、今回は世界の様々なコップにも録音できるようになりました。このようにコップの素材が異なると、その差は音質の違いとして現れます。いろいろなコップを試して、音質の違いを確かめてみるのも面白いと思います。 |
▲前作の針。市販の木綿針を使用しました。
▲新作では、オリジナル針を使用。 |
「新エジソン式コップ蓄音機のリリースにあたり、読者の皆さんへメッセージをお願いします」
湯本: その他、これまでの様々なノウハウをつぎ込んで、全く新しい設計で作りました。細かいところはかなり改善されています。たとえば、ピックアップ(リプロデューサー・レコーダー)の形状を工夫することで、録音中の針とびに強くなった点や、モーターをラバーで包むことによって、ノイズを低減した点、またピックアップの動きを細かく制御することで、録音時間を伸ばした点などです。
このようにかなりの改良がなされていますので、以前の商品をお求めいただいたお客様にもまた十分楽しんでいただける商品に仕上がったと自負しています。この5年間の進歩を体験してみていただけたら幸いです。
「ありがとうございました」
|