Rainbow Loom を発明したChoon Ng 氏特別インタビュー02

先日、日本ホビー賞を受賞した手芸玩具「レインボールーム」。そのレインボールームの産みの親であるChoon Ng 氏へのインタビュー。前半に引き続き後半では、6月から日本で発売される新製品などについて、いちはやく話をききました。

ファンの声とともに進化しつづけるレインボールーム

取材・文/林 みき
写真/清水 紘子
新作の「アルファールーム」

―― アメリカで誕生して大人気となったレインボールームですが、アメリカでは今はどんな状況ですか?

海外では安定の売れ行きを見せているものの、アメリカは過去2年間に比べると、やや人気に陰りが出てきているのを感じています…といっても、この2年間の爆発的な売れ方が、異常なだけだったかもしれませんが(笑)。他の玩具に比べるとずっと売れていますし、まだまだアメリカでも力のある製品です。

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―― ホビーショーでは「アルファルーム」「へアルーム」「フィンガールーム」と3つの新商品を発表されていましたが、これらの商品が開発された経緯はどんなものだったのでしょう?

今回の新商品ですが、どれも開発のきっかけとなったのはファンの方々の作品なんですよ。「アルファルーム」の場合は、多くの方がアルファベット模様を編み込んだブレスレットをレインボールームで作っているのを見たことでした。レインボールームでこういったブレスレットを作ろうとすると3時間くらいかかってしまうので、ファンの方がもっと簡単につくれる編み機を開発できないかと思って開発したんです。

昔のドットマトリクスプリンターが7本のピンで構成されていたことを思い出し、編み機のピンを7本セットにすれば文字を編めるなとひらめいて、「アルファルーム」の編み機はピンを7本セットにしました。それからフック(編み棒)ではなく、特殊なコームも開発しました。このコームを使うと7本のピンにかかっ ている輪ゴムを一気にまとめて編めるので、レインボールームの7倍の速さでブレスレットを編むことが可能なんですよ。

「アルファールーム」 2000円(税別)

―― このコームはすごいですね!

あとパンフレットに入れた実寸の編み図は、レインボールームのウェブサイトからもテンプレートをダウンロードできるようにして、ファンの方々がデザインやアイデアをシェアできるようにもしました。この編み図を用紙から切り離して、手首周りの長さにあわせた状態でドット絵みたいに文字や模様を描きこめば、すぐにブレスレットづくりをはじめられるんですよ。

―― 「アルファルーム」に付属している輪ゴムですが、レインボールームのものと比べると少し太く感じられるようですが…?

そうなんです、模様がきれいに出るようにレインボールームの輪ゴムよりも少し太くて、やや小さめな仕様にしたんです。でもレインボールームの輪ゴムを使って編むこともできますし、他の編み機で作った作品を「アルファルーム」に移植してアレンジを加えることも可能です。レインボールームを楽しんでくれている方々は、これまでにない新しい作品を作って誰かにプレゼントしたいと思っている人が多いように感じているので、全く新しい革新的な編み機をつくろうと思ったんですよ。

―― なるほど。この「へアルーム」については?

子どもって髪飾りをつけるのが好きですよね? この「へアルーム」は編んだものを髪につけられるように開発したんです。この「へアルーム」には、フックを使わずにピンに輪ゴムをかけていくだけで編める「フィンガールーム」という小型編み機がセットに含まれています。このフィンガールームで編んだものに、付属のエクステンションロッドという棒を通し、このロッドに通してあるフックに髪の毛をひっかけてロッドを抜きとると、簡単に髪に作品をつけられるんですよ。また他の編み機で編んだものでも「へアルーム」のパーツを使えば、髪につけられるようになっています。

「ヘアルーム」 2000円(税別)

―― 編んだものにヘアピンを通して髪飾りにするよりもかわいくていいですね! ホビーショーにあわせて発売された「フィンガールーム」はどうして開発を?

指を使って輪ゴムを編む方々もいるのですが、どうしても編みつづけていると指先が痛くなってしまうようで。そこで、より簡単に指だけでも編める「フィンガールーム」を開発したんですよ。これにはピンが4本ついているのですが、輪ゴムをねじってかけたり、ピンを3本だけ使って編んだりと、実は何通りもの編み方を楽しめる仕組みになっていて。色々な人に試してもらったのですが、小さなお子さんからお年を召した方まで、皆さん簡単に編めると言ってくださいましたね。子どもでも扱いやすい大きさですし、お年を召した方には指先のトレーニングにもなりますし、小さいので持ち運びやすいというポイントもあるので、今後かなり強力な製品になるのではないかと思っています。

フックを使わずに指で編める
「フィンガールーム」 650円(税別)

―― しかし、よくこんなにアイデアを思いつきますね!

いや、いや。周りの皆さんが助けてくれるんですよ、「こうしたらどう?」とか「いや、こうじゃない?」って(笑)。みんなが考えてくれたアイデアを聞いて、それらの要素を組み合わせて開発をするので…みんなのチームワークがあるからこそ生まれるんですよ。

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―― これまでファンの方々がつくられた様々な作品をご覧になられてきたかと思いますが、一番印象に残っている作品は何ですか?

やっぱりアメリカのテレビ番組「ジミー・キンメル・ライブ!」用につくられたスーツですね。子どもたちがレインボールームでつくったブレスレットをつなぎあわせたスーツだったのですが、あそこまでたくさんの人がブレスレットを編んでくれたということに感じるものがあって…皆さんのブレスレットを作ることへの愛を感じることができましたよ。

―― チャリティー用につくられたこのスーツは、確かChoon Ng さんが買い上げられたんですよね。まだスーツは保管されていますか?

はい、大切にしています。スーツの売上げ金は小児がんと闘う子どもたちをサポートする団体へ寄付されたのですが、小児がんの子どもや彼らの家族の助けになれたことも光栄に思っています。

―― それにしてもファンの方々の作品を、こまめにチェックされているんですね。

人気が出はじめたときには、特にたくさんチェックしていましたね。そして皆さんの作品を目にする度に驚いていましたよ、「こんなものもつくれるのか?!」って(笑)。かぎ針編みの要領で、編んだ輪ゴムをつなげれば色々なものをつくれるだろうなとは当初から思っていたものの、花やフィギュアだったり、本当に様々な作品をファンの方々が作り出してくれて。今ではポートレイトを作る人もいるんですよ。以前、私もレインボールームで星条旗を編んだことがあったのですが、それよりもっと複雑なもの…例えば肖像画みたいなものを編んでいる人もいて。複雑なものは制作するのにどうしても時間がかかるので、そこまで多くの人には作ってもらえないだろうなと心配したりもしていたのですが、どうやら私の杞憂だったみたいです(笑)。

―― 今、アメリカのファンの間で人気があるのはどんな作品ですか?

今は3Dの立体フィギュアを編む人がいますね。もう本当に今までにない、全く新しいカテゴリーのハンドクラフトが生み出されているようにも感じられて、ひたすら驚いています。それと異なるテイストの作品を作るグループがいくつもあって。ジュエリー作品、食べ物をモチーフとした作品、動物をモチーフとした作品、プリンセスをモチーフとした作品、そして花…本当にたくさんのグループが存在しているんですよ。そんな中、私がすべきことは、彼らが作りたいものを、より簡単に作れるツールを開発することだと考えていて。なので私が作らないといけない編み機は、まだまだたくさんあると思っています。

―― そして新製品が出れば出るほど、ファンの想像力もさらに広がるという。

まさにそうです(笑)。まだプロジェクトの詳細はお伝えできないのですが、今は3Dの立体作品を編めるルームを開発しているんですよ。

―― わっ、それは早く見てみたいです!

(笑)。レインボールームが、いつまでも愛されつづける存在でありつづけるために頑張ります。

―― では最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

日本でレインボールームをここまで広めてくれたファンの皆さんには本当に感謝しています。驚くような新しい作風をどんどん生み出す日本のファンの皆さんの独創性には感動に近いものを覚えています。

―― 国によって作風は異なるものですか?

そうですね。日本の場合はお子さんだけでなくお母さんのファンも多いので、創造性がどこか円熟していますよね。子どもならではの作品もあれば、大人だからこそ作れる作品もあるので、他の国と比べるとより完成度の高い作品が多いように感じますね。

―― そうなんですか。てっきりアメリカでも大人に人気があると思っていました。

アメリカにも大人のファンもいますが、明らかに子どもたちの間での方がレインボールームは人気が高いんですよ。でも日本の場合はお子さんとお母さん、ふたつの世代から支持をいただけていて、ありがたいですね。

―― 日本のファンに期待したいことは何かありますか?

私がファンの皆さんに期待する、ということが実はなくて。私の仕事は彼らがレインボールームをきっかけに体験することを、より良いものにすることですから。もしもっと色々な種類のルームが欲しいと言ってくれるのであれば、彼らの声に耳を傾けて、より良い編み機を開発したいですね。私の仕事はファンの方々に耳を傾けることですから(笑)。なのでアイデアやリクエストがありましたら、ぜひ気軽に教えてくださいね。

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