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ふろく電ブロminiのできるまで

4.電子部品の生産と入手

電ブロの回路の中で中心はラジオになる。ラジオ回路には多くの方式があり、アナログ電子回路の基礎を学ぶにはうってつけなのだ。

ラジオ回路にはいくつかのポイントがある。ひとつは本体側に組み込むアンテナコイルだ。すでにお伝えした通り、バリコンを使用しないので、今回はアンテナコイル部分で同調も行うことになる。既製品のコイルでは今回のふろくにうまく合わず、新たに生産することになった。コイルの性能はコイル線とコア材で決まる。中国から何種類かのフェライトコアを取り寄せ、試作した部品に組み込み、何種類ものコイル線を巻く。フェライトコアの長さはふろくの筐体のサイズに限定されるため、その長さですべてのAMラジオ局が聞こえるよう、コイル線の線径と巻き数を決めていく。しかし、周波数帯500〜1600KHzをカバーできるフェライトコアと巻き数の組み合わせがなかなか見つからない。1次コイル、2次コイルの巻き数、さらには、位置関係などさまざまな検証作業の末、ようやくベストの組み合わせが決まった。今回アンテナコイルにはラジオの同調以外にもうひとつ大きな役割を持たせた。それは、トランスの代用である。そちらは、難なくクリアできた。

▲電子ブロックminiで使用しているゲルマニウムダイオード(左)と、トランジスタ(右)。
ブロックの中に電子部品が組み込まれている。

アンテナコイルの開発と同時にもうひとつの難問とも取り組んだ。ゲルマニウムダイオードの入手だ。ダイオードにはゲルマニウムとシリコンの2つのタイプがあるが、ラジオの回路にはゲルマニウムの方が性能がいい。電ブロで作るラジオ回路もゲルマニウムダイオードが前提になっている。だが今や、ゲルマニウムダイオードは日本はおろか中国や東南アジアでも入手がむずかしい電子部品のひとつなのだ。「ゲルマニウム」というふれこみで入手できた代物が、試作の過程で性能が出ないため、よくよく調べてみたらシリコンだった、などということは珍しくない。この問題に対処するには、時間をかけて探し、見つけた製品を検証するしかないのだ。

ほかにも課題の電子部品がある。肝となるトランジスタだ。もともと電子ブロックという商品が開発されたきっかけのひとつがトランジスタだった。この部品ひとつでアナログ電子回路の世界は飛躍的に広がる。それだけ、電流を増幅し、コントロールするという役割は重要なのだ。

2002年に復刻版を作ったときも、トランジスタの選定には泣かされた。オリジナル版の1976年当時のトランジスタはすでに生産中止で、相当品を使った。相当品と呼ばれるからには同じ性能が出ることが前提だが、意外に品質に差がある。大量に買って、使えるものを選定し、他は捨てる。歩留まりの問題はコストに反映されてしまう。相当品といいながら、どのレベルのトランジスタを入手するかは大きなポイントだ。歩留まりが良く、かつ品質も安定しているトランジスタを求めて、日々チェックが続く。中国側からサンプルが送られてくるたびに、ブロックに組み込み、回路を組んで性能を検査する。

こういった努力の末に、最終仕様が固まったのは、8月の上旬。11月末発売を考慮すれば、ギリギリのスケジュールだった。

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