専門の先生の力を借りて、 念願だった計画が動き出した。
平成17年5月22日午前10時半、茨城県土浦工業高校理化学教室において、湯本村長は第7回実験村開村宣言を発した。
「本年は学研創業60周年、糸川英夫教授のペンシルロケット試射50周年。その記念すべき年に、我々の念願だった自作ペンシルロケットを空高く打ち上げる」
俺たちはロケットボーイズだ! と湯本はニンマリ微笑んだが、実験参加者7名の合計年齢はおおむね280歳、実際にはロケットオールドボーイズだった⋯。「大人の科学」だから仕方がないということにして、早速製作開始である。気持ちだけはボーイズ&ガールだ。
伊藤先生の設計図を基に、まずは推進剤の製作から始めた。過塩素酸アンモニウム(酸化剤・酸素供給)、アルミニウム粉末(助剤・急激に2000度まで温度を上げる)、二酸化マンガン(触媒)を指定された分量量り取り、乳鉢(磁器製)に入れて、乳棒ですりつぶしながら混ぜ合わせる。配合分量を間違えると、後にトンデモナイことになる危険性大なので、慎重に計量していたのだが、湯本村長がウシャッ! とクシャミをぶっ放した。実験室に一瞬、緊張が走る。
伊藤先生、土浦工業高校理科教師・小林先生の二人以外はズブの素人のため、他の者は「トンデモナイ」ことの実態がまったく予測できないのである。そのせいでちょっとしたことに過敏に反応してしまうのであった。
湯本は唇をかみ締め直す。が、しかし。その数分後だった。金子助役の乳鉢内でパシーン! と乾いた破裂音が響いたのである。
これには全員が本当に驚いた。主任の西脇は伊藤先生の背後に素早く身を隠したほどである。先生を守らなければならない立場なのに先生を楯にしたのだ。どうにもならん主任であった。
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