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[第3回]ペーパークラフト・アーティスト 光武利将

“小さなリアル”から“大きな非現実”へ

▲今後は、実物のスケールとは関係なく、大きいものにチャレンジしたいと言う光武氏。これからの作品に、乞うご期待。

記者 では、現在に話を戻します。光武さんにとって、今のお仕事のどういうところが魅力ですか?

光武 作り手からすれば「征服感」ですね。僕が書いた「作り方」にそって、みんな作ってくれるんです。ペーパークラフトが好きな方は「こんなにきれいにできましたよ、どうです?」って、僕に評価を求めてくるんですよ。そういうプロセスのすべてをコントロールできている気がして、うれしいですね。中には、これを改造の道具にして、ちがうものをつくっている人もいるかもしれませんが…。

記者 光武さんのような人ですね(笑)。

光武 個々のスキルで「できるもの」と「できないもの」があります。模型好きの方ですと、個々人で工夫してつくられます。例えば、折れ線などは、線をなぞって折りやすくするんですが、表からなぞるとへこむ。すると、紙が割れて白くなってしまう。でも裏からなぞると折った時にきれいに仕上がるということを考えて、溝のついた台をつかって、そこでわざわざ紙を折ったり。例えば、円を切るとき、カッターを使った手作業だとどうしてもきれいに切れないですが、例えばドリルの刃を使って、円を切る専門の道具をつくって、きれいに完成させる方法を編み出したりするんです。

記者 それは光武さんが指定されるのではなく?

光武 ええ、好きな方が勝手に。僕なんかが作るようりもきれいに作ってきてくれて(笑)。

記者 あんなにつくるのが難しそうなものも?

光武 当然、展開図も解説も、できるだけつくりやすくなるようにしているんですけれど…。例えば、完成させる時に閉じるものの場合、その前段階では作業のための穴があいていて、指が入ってのりしろが押さえられるようにつくっているんだけれど、それでも「ちょっとこれは無理だよね」って僕が思うものも、きれいにつくってくれるんですよね。

記者 そういうときって、やっぱり、うれしいものですか?

光武 とくに時計やカメラなどの精密系の中には「これはできないだろうなぁ」って思いながらつくったものもあるんですが、「いやぁ、全然つくりやすかったよ。よく考えてるね」とか言われちゃうと、複雑な気持ちっていうか…。

記者 では、光武さんにとっては、どんな作品をつくるのが難しいですか?

光武 依頼者から「なんかおもしろいものをやろう!」って言われても困りますよね。このブレゲの腕時計の展開図は時計の展示会の無料の配布物なんです。その展示会に来られたお客さんたちが、本物のブレゲを見て「よかったけれど、あんな高いの買えないよね」って言いながら、家に帰って、僕のペーパークラフトの展開図を眺めて楽しむ…そういう流れができあがっているからおもしろいのであって、全く興味のない人にこれを渡してもおもしろくないので、そのへんの仕組みがちゃんと考えられている方がいいですね。
子ども向けだと、ただのスケールモデルをつくってもおもしろくないですから、完成したあと、少し遊べるように、いろいろと動く仕掛けをつくったり…そういういろんなネタを持っているんですけれど、そんなアイデアを引き出せるような具体的な要望とか目的がないと、難しいですね。実際には、僕の方から「こういうことをしたら、もっとおもしろいですよ」と言えるのですが、ただ漠然と「おもしろいものを」と言われても、困ってしまいます。

記者 では、今後、どんな新しいことにチャレンジしてみたいですか?

光武 小さいものじゃなくて、大きいものをやりたいですね。精密なものを実物大のペーパークラフトにしたり、あるいは、大きなものを何分の1スケールとかで縮小したペパークラフトはありますが、ペーパークラフトによる拡大模型というのはないんですよ。アリなのにこんなにでかいとか。「うわっ、これ、凄い、本物そっくり」じゃなくて、でかいんですよ。ちょっと違うスケール感というか、大きい方にしたい。小さくするスケールモデルにも楽しみはありますが、模型の楽しみ方の逆をやってみたいですね。

記者 では、光武さんにとってペーパークラフトとは?

光武 生き様ですよね。

記者 どういう意味ですか?

光武 あのぉ…360°、見て!って(笑)。

記者 恥ずかしがり屋さんのように見えるんですが、その割りには…。

光武 意外と見せたがりなところもあったり(笑)。

記者 では、最後に、光武さんにとって「学研のふろく」というのはどういう存在でしたか?

光武 まあ、そのときのすべてでしたからね。親や学校や身近なところで知れないことが詰まってますからね。毎月毎月届けられるわけじゃないですか。
こんな楽しい“箱”はないですよね!

記者 はっはっは!“箱”はね!
 

みつたけ としまさ
1972年、静岡県生まれ。 建築完成模型をきっかけにペーパークラフトに目覚め、現在、フリーのペーパークラフト・アーティストとして活躍。1枚の紙から部品を切り出し、組み立てると本物そっくりの完成品に仕上がる「展開図」をデザイン・制作する。とりわけ、子ども向けの動く作品と、大人向けの精密な作品を得意とする。ジャンルの広さと動きのアイデアの卓抜さ、精密さなどで、今、最も注目されるペーパークラフト・アーティストの一人である。
光武氏のHP⇒ Paper Craft Design

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