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[第2回]映画監督 青山真治

▲「本はあまり読んでない」と言いながら、ページをめくると実はしっかり読んでいたことに気づく。

そう言いながら、青山監督は30年以上前の少年時代に戻って、当時の撮影の様子を再現してみせてくれた。

青山 原初的な何かに触れる。(ふろくで)基本中の基本みたいなところに入った時に、そこから世界が広がる。あと、ずぅーっと広がりがある。その一番入り口のところ。 そこを見るっていうのは、シャッターを押せば写るというものではなく、光があって、何かがあって、それをこの暗い箱の中に全部通して、それが写真になる。 ここから先に、あとがある。キャメラというものや映像というものが、ここから先に広がってくるわけで、その一番手前のところをやれたのが…何も知らずに、こういうことをせずに、シャッターを押して使うキャメラを使っていると、あんまりそっち(映画の世界)へ行かなかったでしょうね。

「でも、初めての演出が小学校5年生だなんて、ずいぶん早かったんですね」と言うと、監督は照れくさそうな目をしながらも、わざとふんぞり返って「へっへっへっ!」と大声で笑ってみせた。 記者は、ふろくだけでなく、そのふろくがついていた当時の『5年の科学』を監督の前に差し出した。 「申し訳ないけど、本の中身は全然覚えてないな…」と言ってページをめくっていた監督の手が止まった。

青山 あっ…モアだ! これは読んだ。『幻の巨鳥 モア』…こういうのは読みましたね。覚えてます。

記者 じゃあ、毎月、ワクワクしながら待っていた?

青山 好きでしたね。楽しみでしたね、いつも。

記者 どういうふろくを覚えていますか?

青山 顕微鏡を覚えているなぁ。プレパラートをつくったなぁ。何を見たんだろ?

そう言ったあと、本をめくっていた手が再び止まった。

青山 あっ、この風向計もつくった、つくった! うちのベランダについていた…うむうむ…このへん、全部やってますわ。

そして再び、読み物のページで目を止めて「こういうのは読んでましたね、毎月。謎の生物とか好きだったから…」と言いながらページをめくり、広告のページを目にしたとたん、青山監督は大声を上げた。

青山 これがほしかったんですよね。メカモ! うちの親が買ってくれなかったんです。

青山監督は遠い目をして、いかにも悔しそうに言った。

青山 マイキットもほしかったんんだよな。ほしかったな、これ! うわぁ~!! こういうのんで…シンセ(シンセサイザー)とかに行くやつって、こういうの、学研の『科学』から買って行くやつって、結構いるんじゃないかな。チョー欲しかったもん、これ! 全然買ってくんなかったけど、親が…。

そう、自身も作曲・演奏をこなすミュージシャンである青山監督は悔しそうにぼやいた。

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