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[第2回]映画監督 青山真治

▲大人になるまで持っていたという「かんさつジャンボレンズ」に感慨もひとしお。

そして、『2年の科学』のふろく、かんさつジャンボレンズ(巨大な虫眼鏡のようなもの)が目の前に現れると、監督の興奮は絶頂に達した。

青山 これはもう、大人になるまで持っていた。あんたんですよ。部屋にぽーんって、いっつも。これはもう大好きでした。

記者 ちなみに、ふろくの箱にはマチャアキ(堺正章)ですよ。

青山 あっ、ホント? すげぇー!!

記者 どうですか? こうやって、かつてお好きだったふろくが目の前に…。

青山 楽しかったですね、よく考えてみると。
 重曹とかブドウ糖とかいう言葉をこれで覚えたというか、知ったということに気づきましたね。今見てみて「これで知ったんだ、俺」というのがわかったんですね。
 何食わぬ顔で、毎月、来てたわけだけれど…。

懐かしそうに当時のふろくたちを眺めている青山監督に、最後の質問をぶつけた。
記者 青山監督にとって“科学のふろく”とは何ですか?

青山 今、「何気なく、毎月、ずーっと送られてくる」と言いましたけれど、送られて来る以上、そこで出会っているわけですよね。
 いろんなものの原初的なもの、キャメラならキャメラ、映像なら映像、卓上そうじ機なら卓上そうじ機、プランクトンに至まで、原初的なところとの出会いというか…原初的な部分との出会いというのが『科学と学習』だったよな気がしますね。
 あと、何かに成りきろうとすることとか。
 科学者になりきってる気持ちになる。あるいは、キャメラマンになりきってる感じになる。
 そこから、ソフトの方に行ってしまったんですね…僕はね…科学の方向に行かずにね。

インタビューが終わると、記者は「お待ちかねのメカモで夢を果たしてもらいましょう!」とカニ歩きのメカモを監督のそばに置き、そのリモコンを監督に手渡した。
 「リモコンなんですね、へー」と言いながら、監督はスイッチを押した。
 メカモが動き出すと、監督は「うわっ!」と嬌声を上げた。
 監督によって歩かされたメカモは、シャーコ、シャーコという独特の音を立ててカニ歩きした。

青山 ほしかったなぁ~、子どもの頃…な~んで今、手にしてるんだろう…な~んであの頃に、手にできなかったんだろう…

しばらくの間、シャーコ、シャーコという音だけがあたりに響いていた。

青山 大人買いしますよ。
 完全に飽きないですね。
 これだけで、全然、もう、ずっと見ていられるんだけど…。


シャーコ、シャーコという音。

記者 ぜひ、お買いになって、現場で「次のカット、どうしようかな?」って時に、これを歩かせてみたら……。

青山 絶対、助監督に蹴散らされて、壊されるから、嫌だ!

俺のところしか見てなくて、絶対やられると思います。嫌がらせのように、やられると思う…。

沈黙。シャーコ、シャーコという音。

青山 いい音ですね…いい音…。

そして、青山監督はメカモの横歩きをじっと見つめ、あたりには、シャーコ、シャーコという音が、いつまで、いつまでも、響いていた…。

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