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大人の科学実験村 第1回 アルミを溶かしてバーベキュー

今回参加の村民

編集部員3名に加え、参加希望読者の中から厳正なる抽選の結果、以下の3名に集まっていただいた。

原田 智也さん

元高校の物理の先生。本格復帰を目指し、充電中に実験村に参加。

中西 愛さん

実験村紅一点。日々、友達などに科学の面白さを伝える科学伝道師。

加藤 徹さん

最近仕事を辞め、主夫へ転身。本職は陽気なイラストレーター。


協力/学校法人東京工学院専門学校 文/かなざわいっせい 写真/加藤 啓介 イラスト/加藤 徹

 子どもの頃、夏の自由研究で、いろんな実験にワクワクしていた「あの時」にタイムスリップできる実験村がついに開村! 第1回のテーマは「巨大凹面鏡作り」。いい年をした大人たちが、アルミを溶かして凹面鏡を作り、太陽の熱を集めてバーベキューをしようというのである!
 はたして、その成果はいかに!?

溶けたアルミを回転させると、きれいな凹面鏡ができるはず!
…村長の無責任な発言から始まった。

 3月下旬、設立された「大人の科学・実験村」の初代村長に、無投票で編集部の湯本が就任、助役が金子、西脇が主任である。

 「第1回の実験村では、ビールの空き缶を溶かし巨大凹面鏡を作って太陽光を集め、その熱でヤキトリを焼いて食いつつ、野外ビール大会を行う。本番は5月24・25日だ」
と湯本村長が言ったのだった。しかし助役たちは、ビールの空き缶(アルミニウム)が何度で溶けるのか、どうやって溶かすのかという知識すらなかったのである。村長に問うと、
 「実はオレも知らん。だから、そこら辺りに関する資料を集めまくりプレ実験を行え!」
と言い放った。
 「じゃあ、溶けたアルミで凹面鏡を作るにはどうすればいいのですか?」
金子助役が聞いた。すると、
 「溶解アルミを、ロクロで回転させた鉄製タライに流し込む。回転するうちにタライ中心部のアルミが遠心力で外縁に振られ、放物面ができつつゆっくりと冷えて固まる。そしたら綺麗なアルミの凹面鏡が完成…のはず。というか、そうなってほしい ! 」
湯本村長は暢気かつ無責任及び断固として、そう答えたのだった。ウーンと唸りつつも、助役と主任は行動を開始するしかなかった。

調査の結果、アルミの溶解温度は660度。発火熱1000度以上の備長炭で熱すればアルミは溶けることが判明。多摩川河川敷でのプレ実験で、1600度の熱に耐えるステンレス製深鍋にビール缶を入れ備長炭の火で熱し、アルミの溶解には成功したのである。

 が、凹面鏡の試作では失敗の連続だった。取材したアルミ専門の技術者から、1000度を超える熱を素人が扱うのは無謀で危険 ! と制止されたアルミ溶解に、死傷者なしで成功したので勇気を得た二人は、凹面鏡も! と意気込んだのだが、それが甘かったのだ。

 湯本村長の支持通りに凹面鏡製作プレ実験遂行十数回、出来たアルミの凹面は、表面が波打ちそしてザラザラ、とてもではないが鏡とは言えなかった。はあ…と西脇主任が溜め息吐いたのが、本番前夜である。そして本番の日の朝が来てしまったのだった。

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