さっそく球の両側に馬6頭ずつ、
合計12頭がつながれた。
馬の登場である。12頭に王国民が騎乗し、勢揃いした姿は圧巻だった。マグデブルグで行われた実験も、このような風景だったにちがいない。実験村からは現役馬術部の小桧山聡平くんが騎乗した。
左右6頭ずつに別れ、馬同士を一本のロープで繋ぎ、準備完了! の声を発した湯本村長の出番はここまで。馬に乗れない村長は主役の座から降り、以後、下働きのお手伝いに甘んじるしかないのである。馬6頭⇔真空鍋⇔ホイストスケール(新型電子式吊り計り器)⇔馬6頭と繋ぎ、王国民の穐谷氏がヨーイ・ドン! の声をかけ、左右に引っ張り始めた。
騎乗者全員が、イケー、イケー! と馬をけしかける声が響き渡り、ロープが張り、真空鍋と30kgもあるホイストスケールが空中に持ち上げられ揺れたのだが、しかし。計測できた最大の引く力は僅か170kgにしかならなかった。12頭の馬たちの足並みが揃わず、ロープに馬力を集中できないからだ。乗馬用の馬は、人は乗せるが重たい荷物を引っ張った経験がない。初体験のことを嫌がるのが馬本来の性質である。
ストップ、そして息を整え再びヨーイ・ドンを繰り返すが、何度やっても170kgが最高だった。馬2頭ずつにした方が、足並みを揃えるのは簡単である、という王国の石川氏からの提案に活路を見出し、実際にチャレンジしてみたが、トホホだった。最大が160kgである。それくらいの力ではとてもではないが真空鍋は二つに割れない。
「どこまでいったら割れるのか」の答えを出すのが今回の主目的なのに、これでははっきり言ってどうにもならんのであった。昔の多頭数立て馬車のように、縦横棒を組み合わせ馬たちを固定しなければ、それこそウマくいかないのだ・・・これじゃ無理ですねというムードが漂い始めた。
馬さえ集めりゃいいんですの主任・西脇に、金子助役の非難の視線が飛んだが、しかしだ。実は金子助役は草競馬ジョッキーとして、自称「大活躍」している人物。馬たちの固定方法について主任に事前サジェスチョンができなかった罪はデカイのではないか。でしょう? と西脇が村長に助けを求める。湯本村長は、ウームと唸り腕組みするばかりであった。
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