推進装置は完璧だ! さっそく船を海へと進ませる
では、と湯本村長が「水流の発生は確認できたので、本日のメイン、大人の科学マガジン手作りの高温超電導電磁推進船ヤマト2を海に浮かべ、航行実験を行います」と宣し、主任西脇と金子助役が船を潮だまりにそうっと下ろす。
が、その手が放せない。なぜかというと、ヤマト2の浮力が勝ち過ぎ、手を放すと海面からポコッと浮き上がってしまい、倒れそうだったからだ。さっきは、浮力までは確かめられなかったのだ。
主任西脇はすがるように岩田先生を見た。船の設計は岩田先生が担当したのだ。船体の大部分を占める発泡スチロールの浮力、それに対する船の重さを計算したのだ。よって、岩田先生の設計図通りに船を作れば、船は海面に安定して浮くはずなのである。その通りに全てを作ったのに、手を放すとヤマト2は横転してしまいそうなのだ。
「浮力が強過ぎるなら船を削ればいい!」
蒼ざめた西脇を睨みつけ、村長湯本が言った。もうお前たちには任せていられないと、湯本はカッターナイフで船体の発泡スチロールを削り始めた。
金子が西脇に刺すような視線を放つ。西脇主任は入りたい穴もない。が、ヤマト2の設計段階からミスがあったのなら、それはオレのせいじゃないでしょ? と金子を見た。じゃあ、誰のせいだよ! の視線が西脇に流れ、その直交する方向に視線を逸らす。あ、フレミングの左手の法則に従うように、ややっや、あ…「あんたが責任をとりなさいよ!」の電磁力が発生して、岩田先生に突き刺さったのだ。
な、なんなのよ、え? と岩田先生、硬直した。湯本はカッターナイフで船体の発泡スチロールを削り続けていた。セラミック岡崎は、ド素人相手に最先端の実験をしようとしたのが間違いだったのだ…と頭を抱えた。が、しかし。浮くなら上から押さえつけりゃいい、と思った。
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