前回の『茶運び人形』にひきつづき、からくり人形シリーズ弟2弾ですが『弓曳童子』に取り組むことになったきっかけは何ですか?
湯本:ありがたいことに「大江戸からくり人形」は一時品切れとなるほどの大ヒットとなりました。その購入いただいた方から、からくりシリーズの第二弾のご要望を多数いただきました。その中には、「弓曳童子」を望む声がたくさんありました。スタッフの間でも、以前から「次は絶対チャレンジしたい」という気持ちがありましたので開発にとり組みました。
でも、今回の『弓曳童子』は非常に複雑な機構のようですが、商品化はかなり難しかったのではないですか?
湯本:そうですね。何しろ相手は「からくり人形の最高峰」とまで言われた、あの複雑な機構の「弓曳童子」ですからね。ただからくり人形師の九代・玉屋庄兵衛さんの監修をいただくことができ、玉屋さんが復元したものを元に製作することになったことは非常に大きかったですね。それでも、これが本当にキット化できるかは、正直なところこの時点ではまだ不安でした。
そうですか。その不安はどうクリアしていったのですか?
金子:完璧に復元するとなると、おそらく普通の人には作れない代物になってしまうんですよ。なにせ本物は、6本のてこと11本の糸で動きを制御するという複雑なつくりで、まさに匠の技ですからね。
いろいろな検討を重ねたのですが、結局は、江戸時代の機構を完全に再現するのではなく組み立てやすい形に部品を変形して、極力たくさんの人がキットとして組み立てることが可能になることを優先させるべきという結論となりました。ただし、動きについては絶対妥協しませんでしたよ。ほとんど同じ動作をするようになってますからね。 |
▲九代目玉屋庄兵衛氏の目で試作品をチェック |
組み立てやすい部品を開発するというのも大変だったのではないですか?
金子: これが結構大変なハードルになってしまいました。なにしろ、「機構は簡単に」「動きは同じに」ということですから、相当な工夫をしなくてはいけないわけです。
基本的な機構は、ゼンマイの動力で回転する軸につけられたカムがてこを動かし、てこの先に結ばれた糸が体の各部をひっぱり、一連の動作をするというものです。しかし、オリジナルの複雑なカムとてこの機構をそのまま再現すると、とても組み立てるのが難しくなり、さらに調整も非常に困難になります。
そこで、今回は、てこを「カム板」という形の部品に変えて、これを重ねて一つのシステムを形成するようにしました。
(※詳しくは詳細ページをご覧ください)
これらの工夫で一般の方にも作っていただけるものになったのですね
湯本:そうですね。それでも今回の弓曳童子は、作って、調整をするのにそれなりの時間がかかります。前回の「大江戸からくり人形」(茶運び人形)にくらべれば難しいレベルです。ただ、この過程を十二分に楽しんでいただいける商品になっていますよ。
すこし時間がかかりそうですが、やりがいがありそうですね
金子: これは、江戸時代の匠の作品を基に、現代の「大人の科学」としてのアイデアと技術を動員して、万人向けに昇華した作品だと自負しています。せひ楽しんでください。 |
▲出来上がったパーツを確認する |
ありがとうございました
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