ある時、デパートであこがれの「電子ブロック」が陳列されているのを見つけました。それは、ガラスのショーケースの、自分の背丈より高いところにあったので、手が届くかどうかギリギリだったと思います。じーっと、見上げていました。それは、広告の写真から想像していたよりも本体は小さく感じましたが、ハイテクな雰囲気のブロックが並んでいて、たまらなく素敵なものに見えました。値段は、子供の自分には手が届きませんでした。玩具としても値段は高い方だったと思います。欲しくて欲しくて、その思いを訴えて、親におねだりしましたが…、しかし、結局買ってもらえませんでした。その後も、欲しいと思い続けていたのですが、「電子ブロック」はいつの間にか、広告から消え、デパートのも無くなっていました。そのうちに自分の記憶からも、表面上は消えていました。たまに当時を知る仲間同士で、あー、そういうのあったよね、欲しかったよねえ、なんて話をしたりして思い出すぐらいで、もう二度と製造されることはないんだと思っていました。完全に思い出の世界のものになっていました。でも電気に対する興味は尽きることなく、現在はエレクトロニクスの開発設計の仕事をしています。電子ブロックは持っていませんでしたが、しかし、当時それが世の中に存在したことが、自分をこの道に進ませたきっかけのひとつになったと思います。 |