「拡張パーツの発売の経緯を教えてください」
湯本:「電子ブロックEX150復刻版」は、おかげさまで、2002年の4月に発売してから、わずか1年で7万台の出荷となりました。お客様には大変ご好評いただき、本当にありがとうございました。その中には、昔あった学研電子ブロックEX-181というマシンの復刻を望む声が多く寄せられました。
「それはどんなものだったのでしょうか?」
金子:これは、EX-150に「シンセサイザーパーツ」といういくつかのブロックが追加されてまして、このパーツを使って、追加で31回路を組むことができるというものです。
「それでシンセサイザーパーツの復刻には着手したのでしょうか?」
湯本:はい。着手はしたのですが、、それが、実はこの「シンセサイザーパーツ」の復刻はうまくいかなっかたのです。いろいろと調査をしましたが、このシンセサイザーパーツに必要なICが、現在入手不可能ということがわかりました。そのため、全く同じ動作をするICを試作してみて何度も何度も試したのですが、我々の要求性能を満たすものがうまく作れませんでした。
それで現段階では泣く泣く断念せざる終えなくなりました。
それでも、拡張パーツのご要望にこたえるべく新しく「光実験パーツ」の開発に取り組み始めました。
「そういう経緯があったのですね。では今回は復刻版でなく、光実験の新回路を開発されたということですが、一番苦労した点は?」
金子:フルカラーLEDが、今回一番苦労したポイントでした。これは、1個のLEDにRGBの3つの素子が含まれてて、「+」「R」「G」「B」の4本の足がブロックから出ています。この素子は、+→R、+→G、+→Bと電流を流すことによって、それぞれの色の素子が発光します。ここに直接6Vを流すとLEDが壊れてしまうので、抵抗を使いました。3つの素子に同じ値の抵抗をはさんで、同じ電流を流せば、RGBの3色が均等に発光して、その結果白く見えるはずなのですが、、、始めは、なかなかうまく白になりません。
「なぜ白く発光しなかったのでしょうか?」
金子:これは、フルカラーLEDの特性によるものです。つまり、+→R、+→G、+→Bに同じ電流を流しても、それぞれの明るさが微妙に異なるのです。すると、色がすこし赤くなったり、青っぽくなったりして、「白」と言い切れない色になります。
「そこはどうクリアしたのでしょうか?」
金子:これをクリアするために、まずLEDを選ぶ作業にだいぶ時間がかかりました。完璧に均等に発光するLEDなど存在しないのはわかっていますが、なるべく理想に近いものを探そうとしました。
「うまく理想に近い「白」は出たのでしょうか?」
湯本:それは中国生産の現場でも問題になったんですよ。
この試作の段階で中国から、「かなり青っぽくなる」といわれて送られてきたものを見ると、誰がどうみても「赤っぽく見える」んですよ。散々メールや電話で議論したのですが、どうしても解決しなくて、結局これは「感覚の違いとしか言えない」という結論になりました。
でも、日本で売る商品ですから日本人の感覚に従ってもらわなければいけないわけで、結局「ここまでは許容できる」という部品ランクを絞って、RGB毎に最適な抵抗を選びました。 |
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「色というのは、人それぞれで非常に感覚的なものなのですね」
金子:そうですね。マニュアルにもその抵抗値が指示してあります。さりげなく指示してある抵抗値ですが、そんなわけで実は裏ではかなり苦労しました。
「ありがとうございました」
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