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第10回 世界初挑戦!「レーザー空気望遠鏡」で土星を狙え!

7 日の入りとともに、ターゲットの土星が出現!
7.暗くなってから空を見上げると、土星はすでに高い位置に!ライトの明かりを頼りに準備を急ぐ。
8.「スフィンクス」に土星を設定。自動追尾開始。対物レンズが土星を追いはじめた!
9.対物レンズから照射されるレーザーを接眼部の的に当てて光軸を合わせる。
10.岡村先生がのぞいて土星を探す。レンズの覗き方には少しコツが必要なのだ。

急げ! 土星は1秒に1mmの
速さで逃げていく

 初春の日が落ちて、闇の空に土星が姿を現した。それは小さな点でしかなく、あの輪までは見えない。よって空気望遠鏡で、というのが今回の目的である。

 女子高生村民にいいところを見せなければと並々ならぬ決意で臨んだ西脇の顔色が曇っていく。やはり地上12.5mのデッキが微妙に揺れているのだった。レーザー光も同時にブレる。そのために接眼レンズ板の向き・高さがなかなか決まらない。その上、赤道儀は土星をとらえているのに、間欠的に土星に雲がかかってしまうのだった。

 女子高生村民と夕食を共にしたのだが、人数が多くて女子高生とは別のテーブルに座るハメになった助役・ハゲの金子の機嫌は悪い。西脇、お前、多摩川土手でプレ実験を重ねたんだろ。光軸を合わせる技術はマスターしたはずじゃないのか、え! と、雲間から出て来た土星の放つ光でハゲ頭を光らせながら、金子助役が主任西脇を責め始めた。

 実はここのところ連日連夜、曇りの日ばかりだったこともあり、阿部と主任西脇のプレ実験は全て失敗に終わっていたのである。

 「だから、2枚のレンズを繋いで支える真っ直ぐな金属棒を使う空気望遠鏡にした方が良かったんじゃないかな」

 岡村先生が、そう言った。西脇主任の顔色が更に蒼ざめた。夜だから、他人にその実態は見えないが、口数が減ったことによりそれがわかってしまう。レーザー光を使うことにこだわったのは、西脇だったのである。本番で失敗すれば、某議員同様に雲隠れ入院ということになりかねない。西脇は必死だった。と、そのとき、

 「雲が流れた。赤道儀は土星を鮮やかにキャッチしてる。光軸合わせはおおむねでいい。今だ、覗け!」

 上空班の阿部から声がかかった。覗いたのは岡村先生だった。そして叫んだ。

 「見える、良く見えるぞッ! ピントもばっちり」

 苦悶しながら何度も何度も繰り返し、ビタッと合致の瞬間が生まれたのだった。岡村先生に続き、村民が覗く。しかし、見えない。地球の自転に伴い土星は移動し続けている。焦点距離14mの空気望遠鏡を覗けば、なんと1秒間に1mmも動いてしまうのだ。数秒間で土星は接眼レンズの外へ流れて行き、見ることができないのだ。

 「あーん、いつも先生だけがいいとこ取りなんだから」

 と村民たちが不平を洩らすのを聞きながら、主任西脇が三脚を移動させ、再び光軸合わせに取り掛かる。

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