見えた~! そのかん高い声に 歓声がわきおこった!
今度は村長の湯本が覗き込んだ。そしたら見えたのだ。
「一瞬、チラと確かに見えた。土星だ、輪っかも見えた! でっかいぞッ!」
と感動している数秒間に土星は移動する。またもや三脚を移動。接眼レンズに頭を近づけ、14m先の対物レンズをとらえたら、そのまま真後ろに頭を移動して光軸を見つけるのがコツだが、それがなかなか難しい。
岡村先生の指導を受け、部員たちがチャレンジを繰り返して、「あ、見えた!」の瞬間が来た。「チョーキレイ」に見えたそうである。金生典子、冨山香里の二人が、土星を見た。続いて石田葵、西谷真由里、小森有祐美、平林志野も思わず歓声をあげる。そして最後に小林万里子も見た。
「こんないい土星を見るのは久し振り!」
土星の位置がどんどん高くなるので、空を見上げるとき、みな荒川静香のイナバウアー状態である。

しかし助役の金子だけは、どうやら見ることができなかったのだ。本人は見たと主張するが、「あの小さな点……だろ?」などと曖昧な目撃談なので、主任に却下されたのである。
輪っかが見えたでしょう? の問いに、金子は「…」だった。輪がなければ土星とはいえない。却下が当然である。
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