4月下旬某日、「大人の科学」実験村の村長湯本が西脇主任に指令を発した。
「東北大の内田博士が、色素を使った太陽電池の研究をしておられる。我々も野に咲く生の花から色素を抽出し太陽電池を手作りして、飛行船を飛ばすぞ。内田博士にそのノウハウを教わって来い!」
え、花で発電? そして飛行船…と絶句した西脇に、金子助役の妙に明るい声が飛んだ。
「強力な発電性のある花の色素を我々が発見したら、ノーベル賞だぞ!」
村長湯本と金子助役は頷き合う。そして、それより以後のことは、どこかの首相同様、末端役人西脇に徹頭徹尾丸投げの村長と助役の二人だった。
西脇は単身、東北大学へ向かった。そして5月中旬、彼は色素増感太陽電池に関する知識を、ぎっしり頭に詰め込み帰京した。とりあえず今、日本列島は花満開の季節、材料だけは十分以上ではないか! と叫び、今回の実験の地、茨城県へ出発したのである。
6月4日午後1時半、茨城県八郷町のフラワーパークにて、第4回実験村の開村宣言はなされた。不思議なくらいの晴天だった。参加者は村役人3名、読者代表村民の太田と津田に下働きのスタッフ若干名。
「色素増感太陽電池は次世代の太陽電池である。多くの研究所では人工的に合成した色素を用い、フィルムに塗る酸化チタンも機械で塗装したり、炉で結晶化させたりしている。が、我々のは徹頭徹尾手作り太陽電池だ!」
村長湯本が吠え、作業は始まった。 |