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大人の科学実験村 第4回 花の色素で太陽電池作りに挑戦!

カラフルで経済的な色素増感 太陽電池のしくみ

 色を持ったものは、その色の光だけを反射し、それ以外の色の光を吸収している。吸収したエネルギーの多くは、ふつう熱として放出されるが、アントシアニンなど一部の色素では、吸収したエネルギーで電子を励起させる性質がある。このように色素が電子を励起させる性質を利用したのが、色素増感太陽電池だ。比較的安いプラスチックフィルムで作ることができ、軽量で柔軟、しかも透明なので、いろいろなところに貼り付けて発電できる。応用範囲の広い次世代の太陽電池として期待されている。

今回の実験では、+極側に、ヨウ素溶液の反応を高めるため、触媒として炭素を塗った

(1)色素増感太陽電池に光を当てると…。
(2)色素が光を吸収し、電子(e−)を放出する。
(3)電子は、酸化チタンに移動し、導電膜へと伝わる。
(4)電子は対極まで移動し、三ヨウ化物イオンにくっついて還元し、ヨウ化物イオンにする。
(5)ヨウ化物イオンは電子を放出した色素によって酸化され、三ヨウ化物イオンになる。
(1)~(5)をくり返して、電気が流れる。

ヨウ素が酸化還元を繰り返すところが、植物の光合成に似ている。

内田 聡 工学博士

東北大学 多元物質科学研究所でナノ酸化チタン粉末の水熱合成と色素増感太陽電池を研究中。今回は内田先生にご指導を賜った。

色素増感太陽電池の現在

内田先生の色素増感太陽電池

 ルテニウムという人工色素を使い、触媒に白金を使うなど、精度の高い色素増感太陽電池にしあがっている。高価な導電性ガラスを使用し、密閉性も高いので、ヨウ素溶液も乾燥しにくい。太陽光でなくても蛍光灯の光でも十分モーターが回るほどの実力だ。しかし、エネルギー効率は5~6%くらいと実用化にはもうしばらくかかりそうだ。
http://kuroppe.tagen.tohoku.ac.jp/~dsc/cell.html

カラー写真も同じ原理

 色素増感作用自体はカラー写真に利用さてれおり、この作用を太陽電池に利用することも1960年代より考えられていた。1991年にローザンヌ工科大(スイス)のミヒャエル・グレッツェル教授が、新しい半導体多孔質膜の合成法を開発したことにより、太陽光の変換効率が10%を超える色素増感太陽電池を作ることに成功。(市販のシリコン式太陽電池の変換効率は10~15%程度)それから、世界中の研究者や企業の注目を集めるようになった。

色素増感太陽電池の未来

 家の屋根や外壁、乗り物、服までもカラフルな色素増感太陽電池になるかもしれない。


シリコン式太陽電池のしくみ

 一般に太陽電池といえば、シリコン式をさす。この太陽電池は、半導体の原子に光が当たると、+と−の電荷が発生するのを利用している。
 +が集まりやすい半導体p型シリコンと、−が集まりやすい半導体n型シリコンを、原子レベルで貼り合わせて作る。

 電気発生までのメカニズムはこうだ。まず、太陽電池に光が当たると、+と−の電荷が発生して自由に動き回り始める。+はp型シリコンに、−はn型シリコンに集まり、pn接合を境にして+と−にはっきりと分かれる。電極に電線をつないで回路をつくると電流が流れる。

シリコン式太陽電池のしくみ

色素増感太陽電池のつくりかた

導電フィルムに酸化チタンを均一に塗る。

花の汁につけて、酸化チタンに色素を染み込ませる。

もう一方の導電フィルムに炭素をつけて、貼り合わせる。

ヨウ素溶液を流し込むと発電。

今回、色素を取り出した花など

ガーベラ

ベコニア

ヒメツキミソウ

マリーゴールド

バラ

リンゴ

ローズヒップティー

アメリカンチェリー

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