「しかしだ。色素8種のフィルム版を並列につなげば、6mAくらいは出るだろ!」
と空を仰いだ村長湯本の掛け声と共に、いよいよ本番が始まった。もう一枚のフィルムにヨウ素溶液の反応を良くする8Bの濃い鉛筆をこすりつけ炭素を付着させる。そして酸化チタン+色素のフィルムと重ね、樹脂製両面テープできっちりと貼り合わせた。ヨウ素溶液をスポイトで流し込む。するとヨウ素溶液が流れ込んだ瞬間に早くもテスターの目盛が動き始めた。確実に太陽のエネルギーを電力に変換している。全員が身を乗り出して覗き込む。
1枚で0.7mAを得られれば、8枚繋いで6mAを超える。そしたらモーターが回転する。祈るような西脇主任が見た数値は、ああああ、なんと絶望的な「0.25」…だった。これでは8枚繋いでも合計は2mAでしかない。
しかし、やってみなければわからんぞと村長湯本が8枚のフィルムを繋ぎ、それをモーターに接続した。が、やはりピクリとも動かなかった。風にプロペラを向けると時々痙攣するように回転する。それを金子助役は冷ややかに眺めていた。
我々の色素増感太陽電池ではなく、風がプロペラを回転させているのだ。電力が風に負けている。やはり、エアブラシを使った手塗りの酸化チタンではダメなのか。花の色素も不純物が多すぎるのか。ああ、今回は失敗と言ってしまいたかったが、しかし、そうはさせられない。
じゃあ、もっとサイズの大きなフィルムで作り直そう! と金子は叫んだ。 |