村をゆるがすハプニング続出で、まさかの実験中断!?
ななんだって、雪に凹面を掘るために用意していたシールド板がないだと? 西脇は青ざめながらうなずいた。会社に忘れてきたみたいです…。だから車がちびっと軽かったのである。実験日和の暖かい日差しの下で、村民の気持ちがいきなり凍り付いてしまった。
西脇主任は新婚3か月である。お前、そのせいで気が弛んでるんじゃないかあッ! と口にはしないが、金子助役がそういう視線を主任に差し込み、マズイ、大変によろしくない雰囲気が漂い始めている。それを察した斎藤氏が、じゃあ、手掘りでやりましょうと提案。やらねばならぬの意気込みで参加の村民3名が即座に賛成の手をあげる。主任のチョンボを村民が優しくフォローしようとしているのだった。湯本村長が決を下す。「会社に電話して、その板を赤帽さんに頼んでこっちへ届けてもらえ。届くまでの間、各員交替で手掘りだ!」
あいやあ⋯と嘆きつつも金子助役が雪の小山に飛びかかった。この助役、結構気持ちの切り替えが早かったりする。が、しかし。第2のトラブルが発生してしまった。チューナーが作動しないのだ。その上、テレビまで故障、電源さえ入らない。車で運んで来たときの振動が故障の原因か。再び、ジト⋯ッと嫌な空気が全員を包み込む。このままのムードで、やれる作業だけをとりあえず続行するのは、かえって無力感を生み出すことになりかねない。
「仕方ない、今日はここで作業中止。明日だ、明日。明日、朝から頑張ろう!」湯本村長が、本日のジ・エンドを宣言した。この日、斎藤氏は千葉の自宅まで別のチューナーを取りに戻るしかなかった。往復7時間の道のりである。