ザザザと音が鳴り、おおお、砂嵐の舞う画面の向こうに馬に乗った兵士の絵がうっすらと見えた。斎藤氏がアンテナの角度を再び微調整し始めた。そうしたら、砂嵐が消えたと同時に、嬉しくなるほど鮮明な絵が出た。サーベルで刺された兵士が階段を転げ落ちる。帝政ロシア時代の戦争をモチーフにした大活劇大河ドラマのようである。
テレビの前に全員が集まった。日差しが眩しく画面が光り、見る角度により少し見にくい場所の村民がいる。では、ということでダンボールの覆いを被せると、見えた。全員がくっきりと鮮明な画面を見ることができた。 「でさ、これってほんとにロシアのテレビ放送なの?」 誰かがつぶやいた。そりゃあ、そうでしょうよと返した村民も、実は自信がなさそうな口調である。誰もロシア語を理解できないのだった。であるからして、これがロシア語なのかどうかもわからない。
「あ、今、ペルソナって言ったぞ。ペルソナは多分、ロシア語で『人』って意味だと思う」と誰かが言ったとき、画面がコマーシャル風の絵に変わったのだ。そして、大きく確かに誰もが一度は目にしたことがある、ロシア文字(キリル文字)が映った。なんて書いてあるのか意味はわからないがロシア文字である。 |