雪が氷結してしまったことまで、新婚ボケのせいにされてはたまらない。汚名挽回、西脇主任がロッジに向けて走り出した。そして駆け戻って来た主任が抱えていたのはツルハシだった。遭難救助隊のを借りてきましたあっ! と叫ぶ。おお、この小山の中に人が閉じ込められている、助け出すのだ! という緊急事態をイメージしているのか、村民はツルハシで氷面を叩き始めた。すると、その中心辺りからわずかに穴が掘れてくる。時計の針は午前9時、まだまだ時間はたっぷりあるのだ。
我々「大人の科学」の実験村は、室内で白衣を着てやるものを敢えて避けているのだ。野外で自然と真正面から戦いながらの実験である。それこそが正しい実験村なのだ! と湯本村長が励ます。とおっしゃいますがねえ⋯、ツルハシの一振りで削れる氷の量は手のひらに半分ほど、こりゃあ大変ですわと主任にツルハシを渡し、座り込もうとした金子助役が足を滑らせ転倒した。メガネが吹っ飛びフレームが壊れてしまった。西脇主任がそれを見て、車山高原スキー場に来て初めて笑った。プフフッ⋯間抜けな助役。
その心中を金子にさとられてはマズイと西脇主任は身体を反転させ、再びロッジに向けて走り出した。ジュースを買いに行ったのである。渇いた喉に冷たいジュースが美味い。以後、休み休み、各員交代しつつ雪の小山に穴を掘り続けた。昼食もとらずに、少しずつ掘りに掘りまくり、ようやく中心辺りの深さが40cmほどになった頃、あのシールド板をセット、中心に立てた鉄パイプを支点にして板を回転させ始める。 |