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大人の科学実験村 第3回 雪のパラボラアンテナで海外の衛星放送を受信せよ!

ツルハシ登場
11. スキー場の遭難救助隊よりツルハシを借りて、効率アップ!12. 扇形に金網を切る。13. ペグを使って、雪のパラボラ面に金網を張っていく。

このままでは、
いくら時間があっても足りない…

 雪が氷結してしまったことまで、新婚ボケのせいにされてはたまらない。汚名挽回、西脇主任がロッジに向けて走り出した。そして駆け戻って来た主任が抱えていたのはツルハシだった。遭難救助隊のを借りてきましたあっ! と叫ぶ。おお、この小山の中に人が閉じ込められている、助け出すのだ! という緊急事態をイメージしているのか、村民はツルハシで氷面を叩き始めた。すると、その中心辺りからわずかに穴が掘れてくる。時計の針は午前9時、まだまだ時間はたっぷりあるのだ。

 我々「大人の科学」の実験村は、室内で白衣を着てやるものを敢えて避けているのだ。野外で自然と真正面から戦いながらの実験である。それこそが正しい実験村なのだ! と湯本村長が励ます。とおっしゃいますがねえ⋯、ツルハシの一振りで削れる氷の量は手のひらに半分ほど、こりゃあ大変ですわと主任にツルハシを渡し、座り込もうとした金子助役が足を滑らせ転倒した。メガネが吹っ飛びフレームが壊れてしまった。西脇主任がそれを見て、車山高原スキー場に来て初めて笑った。プフフッ⋯間抜けな助役。

 その心中を金子にさとられてはマズイと西脇主任は身体を反転させ、再びロッジに向けて走り出した。ジュースを買いに行ったのである。渇いた喉に冷たいジュースが美味い。以後、休み休み、各員交代しつつ雪の小山に穴を掘り続けた。昼食もとらずに、少しずつ掘りに掘りまくり、ようやく中心辺りの深さが40cmほどになった頃、あのシールド板をセット、中心に立てた鉄パイプを支点にして板を回転させ始める。

衛星放送にはパラボラアンテナを使う

 衛星放送の電波は、地上の電波とちがって弱い。受信するためには、多くの電波をアンテナに集めるため、パラボラ(放物面)を使う。今回のロシアの衛星のような海外からの電波をとらえるためには、より多くの電波を集めなければならないので、大きなパラボラが必要になる。しかし、大きくなればなるほど、その精度も要求されるのだ。ふつうパラボラの反射器には、電波を反射させるために電気を伝える導体を使っている。雪や氷だけでは電波を反射できない可能性があるので、今回は、反射器に張る金網も用意した。

 パラボラアンテナは、指向性が高いので、正確に衛星の方向にアンテナを向ける必要がある。3mのパラボラでロシアの電波を受ける場合、その誤差は±1度くらいまでしか許されていない。

パラボラ(放物面)の精度

 電波は、放物面で反射されてアンテナ(Fの位置)に集められる。このとき、放物面のどこで反射しても、アンテナまでの経路長が同じでなければいけない。

AB+BF=A'B'+B'F

 なぜなら、経路長が同じでないと、同じ位相だった電波が、アンテナの部分でずれてしまい、お互いに打ち消し合って弱くなってしまうのだ。位相は120度以上ずれるとマイナスになる。ロシアの衛星ゴリゾンの電波の波長は、わずか8cm。波長が短かいので、位相もずれやすい。なるべくパラボラ面の歪みを少なく押さえる必要があるのだ。

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