Polymoogさんの考えは「通常のシンセでは[VCO>VCF>VCA(ENV)+LFO(変調)]という構成だが、パーカッションシンセならVCFで発振を行えば[VCF>VCA]という二段構成で十分になる」というものでした。さらに「1980年代初頭にはAMDEK(RolandDGの前身)からパーカッション・シンセのキットも市販されていた」との情報もありました。こう言われると、その製品のことが気になってしょうがありません。どんな回路だったんだろう…。
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▲AMDEK製パーカッション・シンセサイザー PCK-100(上)と回路基板(下)。6つのパラメータがあり、ゲーム・サウンドなどさまざまな効果音を楽しめる。 |
本の内容に関する企画会議は、ふろくとは関係なく進めていました。何らかの形でふろくができることを夢見つつ。そして、Polymoogさんの提案からちょうど、1か月経った頃のことです。なんという偶然でしょう、あのパーカッション・シンセがネットオークションに出品されていたのです。しかも、運よく落札することができました。さっそく送られてきた製品をばらして、基板を見ました。オリジナルのICが1つ使われてはいますが、それ以外には基本的にトランジスタや抵抗、コンデンサといった一般的な電子部品しかありません。“これならできる”そう思わせる内容でした。専用のICをどうするかを、後回しにすると、一番問題になりそうなのは、パッドの耐久性でしょうか。センサー自体は圧電素子でできるはずです。
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▲中国スタッフによるパーカッション・シンセ試作第1号機。 |
さっそく、いつもふろくをいっしょに作っている開発担当者に打診。中国の電子担当開発者も参加して、似たような機能を持つシンセを試作してみることにしました。待つこと約1か月半。年明けの1月中旬に中国のスタッフが試作を携えて日本にやってきました。オリジナルの回路で、パーカッション・シンセの内容をほぼ達成しています。元の製品にはない、LFOの波形切替スイッチまでついています。さっそく、アンプにつないで音出しをしてみると、これが予想以上におもしろい音を発します。心配なのは、価格ですが、大まかな見積り金額は、いつものマガジンに比べれば高いのですが、びっくりする値段ではありません。「これは、シンセを作るしかない。」そう思いながら、プロジェクト・メンバーに試作第1号を披露しました。「うわ、これは、おもしろい」と大好評で、松武さんはじめ、みんな目を輝かせてつまみを回しています。 プロジェクトは、「ふろくシンセのついた本」プロジェクトへと路線変更です。そして、この時点で編集部にはふろくシンセをさらに発展させる、ひとつのアイデアがありました。
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