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▲Gさんによる試作1号機。Gさんが考える最低限の機能を実装している。 |
2月8日都内某所にて、Gさんに“勝手に”作っていただいたデモ機と対面しました。実にシンプルで、それでいてしっかり「シンセサイザー」として遊べます。このデモ機のコンセプトは次のようなものです。
“初心者でも楽しめるよう、音のバリエーションがそこそこある” “車や楽器など身のまわりの音が、シミュレートできる” “やろうと思えば、演奏もできる”
の3つです。実は、当初から思い描いていたコンセプトなのですが、少々回り道してしまいました。さらに、ふろくとしての製品化を考え、以下のような条件を設けました。
“単三乾電池4本くらいで作動する” “アンプがなくても楽しめるようスピーカーを内蔵する” “パラメータは多くとも6種類くらい”
というものです。かなり厳しい条件です。実際、Gさんからも「これらの制約は、かなり厳しいもので、アナログシンセサイザーの一般的な設計では、クリアできません。そこで、設計時にかなり思い切った省略を行いました」とのコメントをいただきました。以下、Gさんの思考を追ってみました。
まず、楽器的な音(ピアノやバイオリン)を作るには、シンセサイザーの基本的な構成が向いています。
しかし、これでは部品点数が多くなりすぎてしまいます。そこで、VCAを省くことを考えました。VCFで音量の調整も兼ねるのです。
このようになります。実は、コントローラとVCOについては、先の試作で作ってありましたから、次に考えたのは、EGの単純化です。通常はADSR(アタック・ディケイ・サスティン・リリース)の4つのパラメータを持つのですが、これでは部品数が多くなりすぎます。ここから何を選ぶか。選んだのは、AD(アタック・ディケイ)です。持続する音は減衰時間を長くとることで実現しようという発想で、さらにコントローラを離したときには、VCOの発振を止めてしまうことで、EGをさらに簡略化しました。こうしてできた試作は [PITCH] [CUTOFF] [FILTER ENV DEPTH] [RESONANCE] [ATTACK] [DECAY] [VOLUME] と6つのパラメータを持っていました。
このGさん試作1号機は、よりシンセらしいものでしたが、パーカッション・シンセが持っていた効果音を作る面白さが少なくなってしまいました。この試作機とパーカッション試作の合体が理想です。そこで、パーカッション・シンセの持っていた2つのパラメータ、[LFO]と[PITCH EG]を取り入れることにしました。[LFO]の波形も三角波と矩形波の2種類があれば、言うことありません。試作2号機は、パラメータの制約を一旦忘れて、逆に多くの機能を持たせることにしました。
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▲Gさん製作の試作2号機。このままではパラメータが多すぎる。さて、どこを削ろう。 |
試作1号機を前にしての打ち合わせから約2週間後。Gさんの試作2号機ができました。前回よりパラメータが増えていますので、かなり立派です。このまま中国スタッフに見せると、相談するまでもなく「高いよ」と言われてしまいます。そこで、Polymoogさんにも参加してもらって、またまた検討会です。この時点でパラメータは [PITCH] [PITCH EG] [LFO RATE] [LFO DEPTH] [CUTOFF] [FILTER ENV DEPTH] [RESONANCE] [ATTACK] [DECAY] [VOLUME] のツマミにLFOの波形を切り替えるスイッチを入れると11個もあります。ここから、ふろく仕様にパラメータを削るべく、議論しました。
(編)「ピッチを削りましょう」 (G)「えええ?ピッチですか?」 (編)「スライド・コントローラで、音域を広くカバーすれば大丈夫でしょう?」 (G)「うーむ」 (P)「4オクターブくらいにできれば、いけると思います」 (G)「そうですね。わかりました」
大体こんな感じで議論が進みます。シンセ回路にさほど詳しくない編集部の無茶な提案にGさんが驚き、Polymoogさんがその提案の着地点を見つけるといった感じで、ばっさりとパラメータを削っていきました。そして、最終的に6つのパラメータを残しました。急ぎ回路図を中国スタッフに送り、次の試作は中国にまかせることにしました。中国で入手可能な部品との融合をはかるためです。このまますんなり形になることを祈ります。
※VCO:Voltage Controlled Oscilatorの略。音を発振する。
※VCF:Voltage Controlled Filterの略。音色を制御する。
※VCA:Voltage Controlled Amplifierの略。音量を制御する。
※EG:Envelope Generatorの略。音の立ち上がりや持続・減衰時間を制御する。
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