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4月論文(第2論文)

 4月論文の中でアインシュタインは、砂糖分子を溶かした時の溶液の粘性の増加から分子の大きさを推定する。すでにマクスウェルが気体を対象として分子運動論を展開し、原子の直径が1~4Åである事を結論していた。もし化学の教科書に書かれているように複数の原子を組み合わせて分子ができているのなら、分子は原子よりも大きいはずである。アインシュタインは、砂糖分子の半径を9.9Åと計算した。しかし彼にはもう一つの目的があった。それは分子の数を決めようというものである。数が数えられるなら、分子は存在するに違いない。そしてその数は天文学的でなければならないのだ。4月論文の中でアインシュタインはアボガドロ数(1モルあたりの分子の数)を2.1×10の23乗と推定する。これは、現在、知られている値、6.02×10の23乗と3倍ほどしか違わない。

 めでたく博士となったアインシュタインはドイツの『物理学年報』誌にこの論文を発表した。しかしアインシュタインが導き出した粘性の計算は、少々まちがっていたのである。学位審査の際にこの点を質問した教授がいたのだが、たいした問題とはとらえられずにみすごされてしまった。4月論文を読んだフランスの物理化学者ジャン・ペランが1909年、樹脂を使った粘性の測定を指示し、彼の学生が結果をアインシュタインに知らせたが、アインシュタインの計算と期待された樹脂の半径は一致しなかった。結局、チューリッヒ大学の研究者の助けを得て計算の誤りをみつけ、訂正した式を1911年に発表した。これ以降、アインシュタインは数学に強い助手を雇って難問を解決していく。だから「数学はそんなに重要ではない」。本当に大事なのは「光といっしょに走る」、あるいは「自由落下するエレベーターの中に身を置く」といった、本質的な状況を適切に設定する発想力(マッハがあみだした思考実験)だった。そして、理論に彼が要求した「内的な完結性」、つまり美学である。

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